第9話 街へ向かう道中。

9.街へ向かう道中







「あー、街に行きたくないな。」

目が覚めて、少し憂鬱な気分になった。

昨日は行く気満々だったのに。朝になると行きたくなくなる。

とりあえず朝のルーティーンを済ますか......。




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お風呂に入り、洗濯物を干し、食事をした。

「行きたくないなぁ、でも行かないとなぁ。」

庭にでてゴロゴロしながら結界を浮遊させて遊びながら時間をつぶす。

街にいって何をするか、考えておくか...


まずは食事だな、野菜を食べたい。白菜とかキャベツとか。あるかわからないけど。

でも買った物を食べ終わったらまた買いに行かないといけないのはどうしよう?ここで育てる? 知識もないのに育てられるのかな...?

街には図書館的な物はあるのかな?あればそこで調べてみるか?


後はなんか便利な魔道具とかないのか興味がある。高そうだけど。

それと冒険者ギルドみたいなのがあれば入りたいな。

単純に入りたい、異世界だもの。冒険者になりたい。


とりあえずやることは、野菜を買う事と、図書館があれば野菜の育て方を調べる。

冒険者ギルドに登録して、魔石とか爪とかが売れるのかを調べる。あとは魔道具もみる。

行く前に家は放置していけるのかな? 結界で囲っていくか?

圧縮して持っていくか。圧縮はまだよくわかんないとこが多いし、結界で囲っておくだけにしよう。

家を囲む結界をイメージして念じる。



うん、これでいいか。

「よし、いくかぁ。」

胃がキリキリしてきた。




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結界で自分を囲み、空に上昇する。

「もうちょい上がったほうがいいかな?」

下から見られたらどうなるかわからないしな。人が米粒に見えるぐらい上空にいっとこう。

やっぱりお尻がムズムズする。慣れないなぁ。




空に上がり、川を目指す。 川につくとそのまま下流のほうへ飛んでいく。

「いい景色だなぁ。」

前を向けば、朝日がキラキラ輝いていてすごく綺麗だ、森が続き遠くに山が見える。

「見える範囲には何もないなぁ。」

目視で見える範囲には森しかなく、ほんとに村があるのか不安になってきた。



しばらく進んでいると、草原があったり。少し丘になってるとこがあったりと、色々な景色があって楽しい。

上から見るだけだと、よくわからないが魔物っぽい物や動物っぽいのも見える。

見たことないものばかりですごく新鮮だ。これが異世界か。

街に向かうことを決めてよかった。




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日が昇りもうすぐ頂点のあたりにきそうだ。 携帯食料食べておくか...。

結構長いこと飛んできた。最初は楽しかったがずっと同じ景色なので飽きてきた。  この川長いな。そんなことを携帯食料を食べながらボーっと飛んでると。川の近くになにか村っぽいのが見えてきた。


「お? あれは村かな?」

村ってもっと小さいものだと思ってたな...。

大きさは結構でかい、半径300メートルぐらいで村の周囲も木の柵がかなり頑丈に組まれている。

俺がいた場所からここまで一つも村がなかったことを考えると、この村は辺境にあるのかな? 

そんなことを示すようにこちら側には道がないが、村の反対側には道が続いている。

柵の外に畑があり、そこで人が動いている。

こちら側にも一応村への入り口があり、そこから冒険者っぽい。剣などを持った人が出てきている。


あんまりここでゆっくりしてるとばれそうだから早く街にいくか。

上空の高いところを飛んでいるが、ばれるとめんどくさいので村を通り越して先に進む。道があるし、道の上を通っていこう。





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道の上空を飛んでいると、いろんな人が道を歩いている。馬車や、それを護衛してるであろう冒険者達。

時々こちらをみて指をさされてる気がするが気にしない。きっとばれてないはず。

かなり高いところを飛んでるのになんでこっちが見えるんだよ...冒険者こわい。


「ん? あれは。」

道の上を飛んでると、魔物に襲われている馬車が見える。

うわぁテンプレが起きてる。 やだなぁ関わりたくない。

ウルフ系の魔物っぽいやつが馬車を襲っている。護衛はどこかの騎士なのかお揃いの鎧を着ている。陣形を作ってうまく魔物と距離を取り、膠着状態になっている。


「絶対貴族とかそんな感じじゃん、あれ。」

まぁまだ余裕そうだし、少し様子をみてみよう、いくら関わりたくないといっても見捨てるのもいやだ。


「お、動いたな。」

ウルフっぽいのが騎士達に突撃し始めた。


「------!----!」

「ガァッ!」


さすがにこの距離だと騎士達が何か言ってるのかわからないが、ウルフの吠える声は聞こえる。

「おー。激しいな。」

盾を持った騎士が前衛でウルフの噛みつきや爪での攻撃を受け止め、隙間から中衛の騎士が槍で刺している。後衛では馬車の周りに盾持ちの騎士がいて、その中心に指揮官っぽいのが指示を出している。

指揮官は馬車の中の様子を気にしているようだ。


「やっぱり貴族が乗ってる系なのかな? でもこのまま何とかなりそうだな。」

手を出すのは嫌なので、このまま騎士達に頑張ってほしい。そんなフラグを立ててしまった。

馬車内にいる人がどんな人物かわからないので、手を出したくないのだ。

そんなことを考えていただからだろうか。馬車の後ろ、ちょうど騎士達から死角になっている草むらの位置から別のウルフ系の魔物が馬車を狙っているのが見える。

上空にいる俺からは見え見えなんだが......。


「フラグなんて立たないでくれよ......。」

騎士達はまだ気づいていない。前衛が抑えているウルフは徐々に数を減らして、もう残り数匹だ。


こっちから声をかけて注意喚起するべきか...?

でも、なんでお前見てたんだ的な事になりそうでやだな...。

「えー、うーん。ここから結界でどうにかするか...?」

どうしよう?


そんなことをうだうだ考えていると隠れていた魔物が飛び出した。

「やべっ、ええいもうどうにでもなれ!」


『起』


「ウォオン?!」

「-----!?------!」


とっさだったから詠唱出ちゃった。まぁ気づいてくれたならいいか。魔物の胴から下半身にかけて結界で包んでいる。無意識だったけど、無事に動きを止めることに成功した。

普段から結界で遊んでてよかった。


騎士達は隠れてた魔物に気づき無事たおしたが、何か周りを見渡している。

「やべ、手出したのばれたか。」

逃げよう。


「------!-----!--!」

騎士達がなんか言ってるが気のせいだ。なんかめっちゃこっち指さしてるけど。気のせいったら気のせいだ。

さっさと逃げよう。いけ!結界!進んで逃げろ!




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「何とかなったか。」

なんとか逃げ切った、そもそもなんであんなとこにあんな人たちがいて、都合よく襲われてんだよ...

神様なんかやった...?

「おっと危ない、カミサマサイコー。」


神様の存在知ってると迂闊なことを考えれないな。

「お? あれが街か?」

少し遠くに石壁がみえてきた。高さは2~30メートルぐらいか?結構高い。それに奥のほうにお城っぽいのも見える。

どうやって建てたんだろう? やっぱり魔法かな?

そろそろ夕方になるので、少し赤い日がお城にかかって綺麗にみえる。

「でっかいお城だなー、さすが異世界。」

地球にも似たような海外のお城はあるかもしれないが、見たことないし。

異世界で初めてお城を見るとはね。


「このまま近づくのは危ないか。」

壁の上に兵士とバリスタみたいなのが見えるし、少し手前で降りよう。






壁から離れた位置の脇道で降りて、結界を解除する。

「結局どういう設定でいこうかな?」

無難に出稼ぎにきたとかでいいかな? それしかないか。

街にはいる税金は、行き当たりばったりでいこう。わからんもんはわからん。

あと剣ぐらいは腰に掛けておくか。何も持ってないのも不自然だろう。そう考えるとカバンとかも用意するべきだったかな? まぁいいか。




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街に入る列に並ぶ。人数は10人ほどだろうか? 一人一人のスピードはそこそこで、そんなに待たずに入れそうだ。

後ろには行商人らしき馬車。前には剣や斧、弓に杖をもったパーティーっぽい人達。

ふむ、おとなしくしておこう。


「次っ!」

お、呼ばれたか。


「子供か? この街へは何をしに来た?」

「出稼ぎに来ました。」

ふむう、わりと普通なことを聞くんだな。


「剣一本でここまで来たのか?」

「えぇ、まぁ。ははっ」

兵士は話しながらも何やら手続きをしていた。

それにしてもやっぱ人と話すのは苦手だな。つい愛想笑いがでちゃう。


「そうか、税金は銀貨3枚だ。」

「あー、あの。お金持ってないです。」


「あぁ? そうか。出稼ぎにきたといっていたな?冒険者になるのか?」

「えぇ、その予定です。」

やっぱりあるんだ冒険者ギルド。


「そうか、それじゃぁこの仮の証明書を持ち冒険者ギルドへいけ。そしてギルドカードを手に入れたらここに持って帰ってこい。ギルドカードを作ると税金は払わなくてよくなるからな。」

「へー、なるほど。わかりました。」

これ冒険者ギルドにいくっていえば街に入り放題じゃないか?


「この証明書の期限は1週間だ。もし、それまでに返しに来なければお前を指名手配する。 名前は?」

なるほど。

「ケイといいます。」


「ケイだな。よし、それじゃぁこれをもってさっさと行くんだ。冒険者ギルドはこのまま真っすぐいけばわかるだろう。次っ!」

「ありがとうございました。」

兵士にお辞儀をし、街へ入る。




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「おー。」

まさに中世って感じだな。レンガ調の建物ばかりで。二階建てがほとんどだ。

魔法使えばもっと高い建物できそうなのにな。 魔法での建築は値段が高いとかかな?

街にはいってすぐはメインの道だからか、道幅はかなり広い。家と家の間に露店が連なっている。焼き鳥っぽいものや、野菜がはいったなにかのスープ。サンドイッチになんだかよくわからない肉の塊も焼いて売っている。

とりあえず冒険者ギルドにいくか。


メイン通りを進んでいく。ここでも異世界っぽさが出ている。人種だ。

人の外見に尻尾や耳が生えている。獣人とおもわしき人達。角が生えていて筋骨隆々な鬼なのか魔人なのかそれっぽい人達。それにエルフっぽい人達。ドワーフっぽい人達。ホビットっぽい人達。

いろんな人がいる。


「すごいなぁ。」

みんな仲がよさそうだ。この世界では人種で戦争が起きていないのかな?

平和な世界みたいでよかった。

「お?あれか?」


5階建ての石造りと木造が合わさった施設がみえる、看板には翼に剣と盾のマーク。

「ありきたりだけど、わかりやすい。」

入り口は解放されていて扉はない。


「うわぁ、想像通りだな。」

入って右手に酒場があり、いろんな人達がお酒を飲んで騒いでいる。

もう夜が近いからか。ちょうど一仕事おわって帰ってきたところなんだろう。

やだなぁ、早く済まそう。入って左と真ん中が受付っぽい。


受付には何人か並んでいるのでその後ろに並ぶ。パーティーリーダーが並んでるのかな?一人づつ並んでる。

なんかみんな筋肉ムキムキで俺とは体格の差がすごい。

女の人もそれなりにいるんだな。女の人も筋肉質だ。体格がいい。


「次の方どうぞ。」

あ、呼ばれた。

「はい。」


「ご用件は何でしょうか?」

受付の人はエルフのようだ、綺麗な金髪で顔は美人系だろうか、耳がとがってる。少しきつめの目に好みがわかれそうだ。

受付嬢って美人じゃないとだめなのかな? となりの受付も綺麗な人だ。

「冒険者登録に来ました。これ、街に入るときにもらいました。」

そういって仮証明書を取り出す。


「冒険者登録ですね。わかりました、それではこちらに必要事項の記入をお願いします。 文字は書けますか?」

仮証明書を渡し、貰った紙を見てみると、氏名、年齢。スキル欄がある。

文字は読めるな。とりあえず書いてみるか。

「はい、書いてみます。スキルは必須ですか?」

スキルは知られたくないな。結界術って普通なんだろうか?

「必須ではありませんが。クエストを紹介するときにスキルがわかると、ご自身にあったクエストを紹介できます。なのでまぁ、必須ではないですが。書くのが普通でしょうか?」

なるほど。クエストは今のところするつもりはないし。書かなくていいや。

名前はカイっと年齢は15、スキル欄は空欄で。

「はい。書けました。」

そういって用紙を渡す。

「スキル欄が空欄ですが大丈夫ですか?」

「はい、しばらくクエストは受けないつもりなので。」

用事が終われば家に戻るしな。

「わかりました。それでは手続きします。」

受付嬢はそういってカウンターの奥に消えてった。

普通に日本語で書いたつもりだったが、通じるんだな。


この後どうするか考えてたら恐れていた事態が起きてしまった。


「なんだぁ?このガキは。」

あーやだなぁ。

恐る恐る後ろを振り返ると、そこには筋肉ムキムキの3メートル近い鬼が立っていた。

「なんだ、おめぇはよぉ?」


ここは冒険者ギルド、登録にきた若者が後ろから何やらいかつい人に声を掛けられる。少なくとも友好的にはみえない。

こ れ は。



テ、テンプレやだああああああああああ。









名前:ケイ   15歳

LV 7

HP41/41 MP66/66

体:21

力:14

魔:32

守:11

速:20



スキル 言語理解  結界術Lv3




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