第5話 なんかいたんだけど?

5.なんかいたんだけど?








「最悪な目覚めだ......」


昨日倒したゴブリンの肉塊が落ちる夢を見た。

なんか青い血が滴ってて、ぴくぴくうごいてた。



「忘れよう」

なかなか強烈だったが。トラウマになったりしないよな......?



寝る前にお風呂に入るのをまた忘れていたので出かける前にお風呂へいこう。

昨日出しっぱなしだった手鏡をアイテム袋に入れ、お風呂へ向かう。


脱衣所で服を脱ぎ、洗濯機へいれ。お風呂へ。

シャワーで一度全身を洗い流してから置いてある石鹸で頭から全身へと洗っていく。


「あ゛~温度がぬるい......熱いお湯が出るようにならないかなぁ」


神様がおまけとしてくれた家だから文句は言いたくないが、日本人だった俺からすればお風呂のお湯がぬるいのはちょっと微妙な感じだ。出来れば熱いお湯で流したい。


「まぁ、お風呂に入れるだけでも贅沢か」


こういった異世界ではよくある物語と同じ様に、街ではお風呂は貴族しか入れないとか、お風呂があったとしても高級宿でしかないとかありそうだもんな。



お風呂からあがり洗濯が終わった服を昨日と同じように外へ干しにいく。

一人で生活ってやっぱり大変だな。



昨日と同じ食事を用意して、準備を整える。


「昨日は家をでて左にいって川だったから、今日は右に行こうかな?」


まずは周辺の事を確認しないとな。

そう思い右の森へ歩いていく。



森を歩きながら考える。



昨日はあまり見てる暇がなかったが、改めて見ると森にはいろいろあるんだな。

明らかに食べれなさそうな赤色をしたキノコ。緑と黒が混じってねじれている木の実。

木の種類も見たことないものばかりだ。



「とはいっても、そもそも地球にある植物の種類なんて少ししか知らないんだけど」


幼少期からゲームをし、漫画をよんで。社会人になってからは適当な動画を見る日々だったんだ。そんな知識あるわけがなかった。



「ん?なんだあれ?」


遠くにとてつもなくでかい木が見える。

あんなにでかい木があるなんてまさに異世界だな。



異世界で、まわりに比べて一つだけでかい木。これは何かあるな。

ファンタジー代表の世界樹か?



そんなことを考えながらも少しづつ近づいていく。

近づくとわかる、木のでかさが...

高さは300メートルぐらいか? 幹の太さはもはやよくわからない。壁みたいだ。



「でっけぇー」

上を見あげ、すごいあほ面を晒していたとおもう。それだけすごかった。

なんだあれ? なにかきらきらしている。



色とりどりのきらきらした物がいっぱい浮遊している。

ボーっと見てると視界の端からきらきらが近づいてきた。


「なんだこれは?」


オレンジ色に淡く光る、大きさは15センチぐらいだろうか。

人を小さくしたような外見。トンボのような羽根。



なんかいたんだけど?


「まさか、妖精ってやつか......?」


そんな妖精が近づいてきた。

仰向けに寝ていびきをかきながら、お腹が痒いのかぽりぽりとかいている。



「妖精じゃないなこれは、認めたくない。」

ものすごくずぼらだ、妖精なわけなかったな。



それにしても今日はまだ魔物に出会ってないな。これはあれか? 世界樹パワーで魔物がこの辺にはいないとかいう。あれか?

つまりこのへんは安全地帯なわけだ、覚えておこう。



家からここまで3キロぐらいか? それなりに離れているし、これ以上はまだいかないでおこう。

川のほうに魔物がいたし、そっちにいってレベルを少しあげたいな。

そう思い世界樹っぽいものから離れる。



妖精っぽいものはいびきをかきながら流れていった。





◇  ◇  ◇  ◇





家についたな、少しお腹がすいたが、このまま川のほうへいくか。携帯食料の味も気になるし、お昼は携帯食料にしよう。

風でぱたぱたと揺れる洗濯物をみつつ、家を通り過ぎ川のある森へ歩いていく。



「ついたー」


川は昨日と変わらず澄んでいる。膝までしかない水深だが川の底の石まではっきりと見える。それに川魚が泳いでるのも見える。ここで釣りをしてみるのも楽しそうかもな。


家から川までは100メートルぐらいか? そう考えると昨日の魔物はかなり家から近い位置にいたんだな......

寝るときだけでも結界を張りながら寝るべきか?

結界を張りながら寝れるかどうかの確認のためにも今日寝るときにそうするか。



ここで少し休憩しよう。


川のそばに腰をおろし。アイテム袋から携帯食料を取り出す。見た目は前世でよくみたタイプのバータイプだ。

異世界でもお手軽な食料ってなるとこんな形になるのか。

味のほうは。ふむ、少ししっとりしていて。噛み応えがある。食べたことのない果物の味がする。結構甘い。

うまいな。お菓子間隔で、食べ過ぎないように注意しないと。



お腹を満たし、立ち上がる。


「さてどっちにすすもう? 上流か、下流か。」


神様がいうにはここは人里はなれたところらしいし、村があるとすれば下流か?

でも川の形もわからないし、考えるだけ無駄か。


「こういうときは棒で決めよう。」


そのへんの枯れ木を拾い、地面に突き立てる。

よし、いけ!

手を放すと棒が倒れる。



川の向こう側を指して。



「うん、もっかい。」


気を取り直し、もう一度棒を刺す。

いけ!

棒が倒れる。



川の向こう側を指して。



もういいや上流へいこう。

なんだったんだ? 今の時間は。



川の上流へいく前に今いる場所の目印になるように近くの木にマークをつける。

簡単なばつ印と先ほど使った棒を地面刺しておくだけだけどいいだろう、俺がわかればいいんだし。

マークをつけ、上流へ向かい歩き出す。



川のせせらぎの音を聞きながら、歩く。天気もいいし、散歩日和だな。



少し前、50メートルほど先だろうか。ゴブリンが見える。


「ゴブリンがいるなー......ゴブリン!?」


ボーっとしすぎた、魔物がいるじゃん。

MPは回復してるだろうし。ゴブリンの足を狙いイメージする。

右手を前にだして念じる。



『起』



「グギャ?!」

驚いてるがそのまま続けて顔を狙う。

向けたままの右手を構え念じる。



『起』



「────?!」



ゴブリンが暴れてるが結界は壊せそうもない。

もうゴブリンなら余裕だな。一応周辺の警戒をしつつゴブリンが倒れるのを待つ。

そういえば自然と結界を使っていたがゴブリンとは50メートルほど離れていたが、結構届くんだな...?



「射程距離の確認を忘れてたな」


大事なことだろうに、俺は抜けてるな......自分でいってて悲しくなった。

家に帰ったら確認しとこう。心のメモに書いておく。もしかしたら忘れるけど。



そんなことをしていると、ゴブリンが息絶えたようだ。ちょうど光になって消えていく。


「やっと消えたか、何が落ちてるかな?」



『消』



近づいて確認してみると魔石と爪と牙が落ちていた。

レアドロップとかないのかな?

ゴブリンのレアドロップ......なんだろう?

肉塊じゃないよな?



ドロップ品を拾い先へ進む。


「それにしてもレベルいくつまであげよう?」


現在でもゴブリンは楽に倒せている。だが、きっとゴブリンだから楽に倒せてるんだろうな。

ファンタジーの魔物ねぇ、何がいたかな。

ゴブリンにオークに、オーガとか?トロールとか、思いつくのは人型ばかりだな。

動物型だとなんだろう。

オオカミ系とか?鹿にイノシシもありえるか。



ファンタジーといえばゴブリンと肩を並べる代表がいたな。


「スライム.....か」


実際スライムがいたらどんな形だろう?不定形?それとも雫形?

どっちでもありえるのか。

そもそも結界でスライム倒せるのか? 帰ってから確認する事が増えたな.....



あれこれ考えながらも、森を歩く。


「結局は結界術に仕えるMP容量を増やしたほうがよさそうだ」


できることも増えるだろうし、レベル上げになるってことか。



レベルが上がってできることが増えるまでは弱い魔物しか出ないように祈ろう。

あとは強そうなのいたら全力で逃げる。


「お? またゴブリンだ」


歩いてるとまたゴブリンがいたので、さくっと倒す。



『起』    



『消』



落ちているドロップを拾う。魔石の爪に牙か。

やっぱりレアドロップってないのかな? もっとたくさん倒すか。



ゴブリンを倒しつつのんびり歩く。

今日は4匹ぐらいか? いつレベルあがるんだろう。


「結構遠くまできたな」


家からここまで、5キロほどか?



上流には人はいない感じか? さすがにこんなに近くにはないか?

そんなことを考えてると真横で音がした。



「ん?」


「グギャ?」



「うお?! ゴブリンちかっ! くっさぁっ!」


「グギャギャギャー!」



横を見ると、ゴブリンがすぐ近く3メートルぐらいの距離にいた。

今まで消える前のゴブリンにここまで近づいたことがなかったから気づかなかったが、ゴブリン臭い。とてつもなく。鼻が曲がりそうだ。



「くっせぇぇ!」



『起』



「────?!」


びっくりしすぎてゴブリンを結界で包んでしまった。


「ふぅ、あせったぁ」


ほんとに気をつけよう。ここは異世界なんだ......



神様、索敵スキル下さい。切実に。



ゴブリンは驚いて逃げようとしている。


「ん? なんだこのゴブリン、逃げようとしてる?」


今まで倒したゴブリンは驚いて暴れていたが、逃げようとはしてなかった。

この違いはなんだ? 敵がいてかなわなさそうなら逃げようとする。

近くに味方のゴブリンがいるのか?

とりあえず、このゴブリンを倒そう。

顔の周りに結界を。

念じる。



『起』     



『消』



ゴブリンを倒しドロップを拾う。

魔石に爪に牙ね、この三つは確実にドロップなのかね?


「お? この感じはレベルアップか?」


体から力があふれる感じがする。




名前:ケイ   15歳


LV 2→3


HP32/32→HP34/34 MP45/54→MP58/58


体:16→17

力:9→10

魔:22→24

守:6→7

速:12→14



スキル 言語理解  結界術Lv1





やっと力が二桁か......ほかのステータスに比べると低い。



さて、ゴブリンが逃げ出そうとしてたのは向こうか?

川の上流、左斜め前の方向へ歩いていく。



「何匹いることやら。」

いっぱいいたら逃げよう。うん。



森を抜けきる直前の草むらに隠れて、様子をみる。

藁のような物でできた家。お肉を焼いている焚火。規模は大きくなく、30匹ぐらいだろうか。



そこには村があった、ゴブリンの村が。





「わー、しゅごーい。」

うん。逃げよう。








名前:ケイ   15歳

LV 3

HP34/34 MP58/58

体:17

力:10

魔:24

守:7

速:14



スキル 言語理解  結界術Lv1



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