幻世天球儀
KOUJIRO
第1話 落ちこぼれ
第二次世界大戦のとある海戦にて、圧倒的物量を誇るはずの米国艦隊は苦戦を強いられていた。
「撃て撃てー!!」
「ダメです当たりません!」
米国艦隊から放たれる鉄の暴風とも言われる艦砲射撃は、まるで見えない壁にでも阻まれているかの様に日本の戦艦に一つとしてあたらなかった。
さらに、敵の戦艦や上空から放たれる謎の攻撃により米国側の船はバターの様に斬られ沈没していく。
「クソっ!一体なんなんだ!?」
指揮官の一人が双眼鏡で上空を見ると、そこには空中に浮いている人間がいた。
日本兵だ。そして、その日本兵の手には刀が握られていた。
「……浮いてる?」
日本兵が手にした刀を振り下ろすと、隣にいた戦艦が真っ二つに切断された。どうやら謎の攻撃の正体は斬撃のようだ。
「何なんだあれは?ジャップ共は一体どんな兵器を作ったというんだ!」
それは、まるで悪夢だった。開戦から二時間と経たず米国艦隊は壊滅したのだった。
この海戦で初の実戦投入となった
80年後。
二月。暦の上では春となったが寒さが続くこの季節。富士の麓に造られた奏霊士訓練学校では卒業試験が行われていた。
「緊張してきた」
試験の順番を待っている俺は、徐々に近づく自分の番に不安を感じてきた。
「大丈夫だよ。ほら深呼吸して」
俺の緊張をほぐそうと、同級生で幼馴染の
「では次!
「はい!」
教官に呼ばれ前に進む俺に、友人の
「頑張れよ煉」
俺は八尋の方見て、小さく頷いて見せる。
教官に呼ばれ、俺は前に進む。試験官の前には試験用に用意された刀『聖霊刃』が置かれている。
聖霊刃とは、見た目こそ普通の日本刀だが、超常的な力を有する神器であり、使用者の霊質によって形状が変わり固有の能力を発現するこの国の主力兵器の一つだ。
試験は教官との一体一の立ち合いで、実力ありと判断された者のみ卒業できる事となっており、卒業した者は奏霊士と呼ばれる兵士となる。
「はあ!!!」
気合と共に俺は聖霊刃に霊気を込めた。
しかし、握られた聖霊刃は何も反応を示さない。
「はっ! ふっ!」
俺は何度も霊気を込め直すが、それでも聖霊刃は反応しない。
「クソっ! 何で!?」
──まずい、早くしないとこのままじゃ失格だ。
なおも霊気を込めるが、一向に変化を見せない聖霊刃に対し俺は徐々に焦りと苛立ちを覚えた。
「もういい、下がれ。次」
教官にそう言われ、俺は呆然とその場に立ち尽くした。
「おい、どけよ落ちこぼれ」
突き飛ばされた俺は尻もちをつき、ようやく自身に付きつけられた事実を受けいれる事が出来た。
──ああ、そうか俺は落ちたのか。
こうして立ち合う事もなく、俺の試験は不合格という形で終わったのだった。
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