アイスクリーム
雪のある場所を発見し、氷を保管する穴蔵も出来たので、そこからは一人でどんどん雪を運んだ。
その間にテオとテルマはベッドやテーブルを作り、ペータは家をどんどん修繕していった。三人の入学式までには順調に生活が整えることができた。
「正直、こんなに早く暮らしを整えるとは思わなかったわ、テーブルもイスも良く出来ているじゃない」
ミルヒ先生はちょくちょく、ヤギのミルクを飲みながら雑談しに寄ってくれる。
「それに、この氷室!この大きさなら、次に雪が降るまで雪が残っているのではないかしら。いいわ~。それでは始めるわよ!アイスクリーム作り」
アイスクリームの作り方は思いのほか簡単だった。ミルクと砂糖を温めてから、冷やして何度も混ぜて、また冷やす。そしてまた混ぜる。
空気をいっぱい含めてふわふわの冷え冷えで、甘いのにさっぱりとして一瞬で口の中で無くなった。
一口目でアイスクリームが大好きになった僕達は、砂糖の分量を調節しジャムを添えてみたり、いろいろ試行錯誤しながらアイスクリームの試作を重ね入学までの日々を過ごした。
ペータはヤギのミルクが沢山出るように、マッサージしながら良いエサを探し、せっせとミルクを絞った。
ある日、保存している氷室の土の匂いがミルクに移っていることに気づき、対策をいろいろ試した結果、氷室に紫の花を一緒に保管してみたら思いのほか相性が良く、甘いふわっとした香りが楽しめる、ますます美味しいアイスクリームが完成した。
「~ん。美味しいわ。これをお祭りに出店しましょう」
「お祭りがあるんですか?」
ミルヒ先生のお話は、入学式が終わった後に行われる新入生歓迎でアイスクリームを売り出そうというお誘いだった。
入学式という名の行事は午前の早いうちに終わり、どうやら新入生歓迎のお祭りの方が主要だったようだ。
卒業生の不要になった家具や道具、授業で作った工作類の売り出し、それから畜産物や収穫した野菜、食事も売っていて近隣の住民や保護者も招いて大々的に開催されている。大賑わいだ。
「あなた達はワタクシの手伝いってことで、売り上げはちゃんと分配するからお願いね、コーヒーも出すからそっちも手伝って頂戴」
ミルヒ先生に事前に言われていたので、前々の準備から当日の対応まであちこち駆り出された。
天気も良く、コーヒーは冷え、アイスクリームは子供から大人まで大盛況だった。
コーヒーにアイスを浮かべたものは結構な値段だったが、苦い飲み物と甘いアイスの相乗効果でどちらも良く売れ、入学式が終った三人が合流しても大忙しだった。
「まぁまぁまぁ。あなた達はずいぶん働き者なのね。初めてなのに手際も良かったわ、やるじゃない」
春先だというのに四人で汗だくで動き回った甲斐があり、お褒めの言葉を貰った。
売り上げはなかなかのものになり、結構な金額を分配してもらった。
「アークさん、いつまでも無職でふらふらしていたら行けないわ。働き口はあるの?もし仕事をお探しなのでしたら、学園を手伝ってくれないかしら。薬草を扱えるのでしたら畑や薬学の授業の準備や雑用もお願いしたいわ」
薄々勘づいていていたが、ミルヒ先生から無職な暇人だと心配されていたみたいだ。仕事は街の方でも決めていたが、正直、学園にも興味がある。二つ返事で引き受けた。
それから、今後のアイスクリームの販売、売り出しに協力してくれそうなお店や場所なども紹介してもらった。
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