ミルヒ先生

 眩しい朝日と共に全員が早々に目覚め、すぐにこれからについて話し合った。

 やることがたくさんある。

 まずは生活できるように整えないといけない。必要な物を考えるところから始めた。ベットやテーブルは作る必要があるし、水も探しに行かないといけない。

 まずは、水源の確保と買い出しに行くことに話がまとまったところで「おはよう」とまだ早いうちにミルヒ先生が訪ねてきた。


「一晩考えたのだけど、これよ『アイスクリーム』知ってる?子供の頃食べたのを思い出したわ。冷たくて甘いミルクのお菓子よ」

 先生は来て早々に突然なにか話しを始めたが、唐突すぎてなにを言っているのかよくわからない。


「先生、話が急すぎます。まだ生活も整ってないんです」

「なに言ってるのよ、ペータ。あなたも料理の勉強に来たのなら、ここはワクワクするところでしょ、食べたことあるの?『アイスクリーム』よ」

 先生は、昔食べたアイスクリームが美味しかったことや、他にも昨日考えたミルクを使った料理やお菓子の事を話し始めた。

 僕たちはもう一度、まだ生活が整っていないこと、水も道具も無いことを丁寧に説明したら一旦は落ち着いてくれた。


「そうしたら、早く生活基盤を整えなさい。そうそう、シーツを持ってきてあげたわ」

 ミルヒ先生が寮生に支給されているシーツを渡してくれた。これを届けに来てくれたらしい。僕の分もあった。


「ベットや家具は支給できないから作りなさい。教科書に木の切り方や道具の使い方の基本が載っているし、道具は無かったら学校で貸し出せるわ。図書館もあるから一度学校に取りに来なさい」

 次々指示を出してくる。

「学校で貸し出せるものは他にもあるし、必要な物があったら書き出して頂戴。相談に乗るわ。それはそうと、お腹が空いたわね。あなた達の出身はどこ?名産品はなに?」


 僕たちは旅の途中で買ってきた、お餅や乾燥肉と野菜など一通り提出して、ミルヒ先生の視察兼朝ごはんになった。


「その紫の花は知らないわね。興味あるわ。どうやって食べるの?」

 リリスが作ったジャムとシュワシュワの粉を水に溶かして先生に渡した。

「炭酸水ね、普通のより少し酸っぱいけど美味しいわ、なにより色が綺麗ね。いけるわ」

 次々と出した食料について先生が味見をしてから質問をされ、賑やかというか慌ただしい食事になった。

 もちろん先生はミルクもご所望で、ペータが朝搾ったヤギのミルクをごくごく飲んだ。

「この辺ではヤギは飼わないのですか?」

「冬の間の飼料が高すぎるのよ、だから飼おうとは思わないわね。雪が降るから今の内から冬に備えて、草を刈って干し草なりにしておきなさい。一頭くらいならそれで賄えると思うけど冬になると手に入らないわよ」

 ペータがメモを取る。

「ミルク自体も保存の関係であまり流通しないわね。チーズやバターに加工されて販売されているからそんなに不便はしないし、季節によっては手に入ることもあるけど安くはないわね。あ、そうそう。入学式の後、卒業生の不用品を売り出すお祭りがあるのよ。そこで、家具もいくつか買えると思うわ。それと、飲食の屋台も出すから、そこでアイスクリームを売りましょうよ」

 ミルヒ先生はまた一方的に話し始めて、ペータは慌ててメモ帳にまた書き足す。


 その他にも、街の買い物できる場所やおすすめの食堂、学校生活の注意点や季節についての過ごし方を次から次へと教えてくれた。


「しっかり勉強しなさい。すぐに生活の準備が整えて知らせに来なさい、『アイスクリーム』作るわよ。忘れないでね」

 そう言って帰って行った。と思ったら慌てて戻って来た。


「忘れてたわ。まだ山に雪が残っているはずだから、集めて保管しておいてちょうだい。山を登ればまだ残っているから、たくさん集めてきてね。アイスクリームには氷室が必要なの」


 なんだかんだで疲れたけど、ミルヒ先生教えに来てくれた情報は、知らない土地で暮らし始める新参者の僕達にはとてもありがたかった。

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