15歳

「ふー」

 日差しが暑い。畑を耕し、花を植える準備ができた。

 土と一緒に採ってきたものはそのまま植え、湿らせながら持ち帰ったのは挿木してみた。

 採ってから時間が経ってしまったので心配していたが、両方ともしばらくすると芽が出てきた。

 乾燥させながら持ち帰ったものからも、ちゃんと種が採れた。

 竜のお花だけあって、普通の植物より強いのかもしれない。育てることができそうだ。


 一息ついたところで、母さんと父さんに、馬車に乗っていた時の御者さん達が話していた、守衛団で旅人の為の講習を受けられるかについて聞いてみた。

 二人は心当たりが無いようだったけど、改めて調べてみたら制度自体は存在していた。前任者が退任する時に引継ぎがうまくいかなかったうえに、『ワサー』は旅人が滅多に訪れない街だったので、忘れられていた。

 父さんがとなり街へ行って指南してもらい、再び制度は整備された。

 内容は旅人としての身元の登録と、物資の輸送や日雇いの仕事を斡旋してくれる制度だった。もちろん早速研修を受け、ついでに鍛錬所で稽古をつけてもらった。

 父母の同僚は、みな良い人で、防水の布や役立つ持ち物、旅をする為の良い装備も教えてもらった。

 残念なことに、雨の日の野営の仕方は誰に聞いても「我慢」としか答えが返ってこなかった。


 そしてできるかぎり、アルヴァ叔父さんや爺ちゃんと一緒に薬を売りに行き、知識を詰め込んでもらいながら、近隣の街でリンを探した。


 空いた時間は畑を耕したり、『ワサー』の街の食堂でお手伝いをして、ひたすらお金を稼いだ。

 他にもやれることがないかを皆で考え、探し歩いた。近場は探し尽くし、リンへの手がかりはなにも進展がないまま、家の周りは紫の花でいっぱいになった。


 リリスは紫の花が気に入ったようで、世話し率先をし、サキさんと石鹸やお茶、お花の使い方について手紙のやりとりをしていた。

 テオとテルマは、焚火に入れると虫が寄って来ないように薬草を調合してくれた。虫よけの丸薬は紫の花が入っていて香りも良く、火を着けなくても虫よけ効果があった。その他にも、いろいろ便利でおかしな道具を考え、作りあげていた。

フィフィ叔母さんは元気な女の子を産み、ぐにゃぐにゃでふわふわだったミミは皆に見守られながら成長し、元気に野山を駆け歩いている。


 そして、僕の踝まであった大きめの外套はいつの間にか丁度良い丈になり、念願の15歳になった。

 その間貯めることのできたお金は半年分位の旅費にはなるだろうか。

 いろいろ準備していたけど、同様に皆もお金を含め僕の為にいろいろ準備してくれていた。

「リンを探しに行きたいのはあなただけではないのよ」と言われ、ありがたく受け取った。


「定期的に戻ってきなさい。あなたが心配なのもあるけど、こっちで先に見つけちゃうかもしれないから。そうね…半年に一度位は帰って報告すること」


「すぐ見つけて、すぐに帰ってくるよ」

 旅支度を整え、木彫りの竜にも挨拶をする。


「行ってきます」

 良く晴れた日に足取り軽く、家を出た。

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