月日
それから何年も経って、いつの間にか私はイーサと夫婦と呼ばれるようになった。
さらに年月を重ねた今は街の人にはイーサの娘だと思われている。
ミスティとサニーは長女アメリアと4つ下の息子アルヴァを育て上げた。
アメリアはある日突然、鍛錬場に通い剣を習い始めた。
そこで連れ合いを見つけ、今は警護団の一員として街に通いながら長男と長女を育てている。
アルヴァもお嫁さんと一緒に薬草畑を耕し、双子の男の子を育てている。近々一人増える予定で、みんなすくすく育っている。
畑に雨をあげながら、なんとなく流れる月日を思い返し幸せに浸っていると「リーン」と呼んでる声がする。
茂みからひょこっと顔を出したのは小さな男の子アーク。アメリアの息子だ。
ミスティとサニーの初孫で私もおばあちゃんと呼んでもらっていたのに、最近は生意気盛りで『リン』と呼び捨てにされている。
「もう、ちゃんと道を通ってきなさい」
頭についていた葉っぱやら蜘蛛の巣やらを取ってあげる。やんちゃ坊主だ。
「やっぱり道を通って来た方が早かったかも」
にかっと笑う。
かわいいなぁ。
少しイーサにも似ていて遺伝って不思議だなと思う。
おしめを替えて面倒をみてあげたので、私も「おばあちゃん」と呼んでほしいのにシワシワでもヨボヨボじゃないから呼んであげないと、この間言われてしまった。
「イーサが探してたから一緒に帰ろう」
と言うので二人で手を繋いで帰るとイーサが家の前で作業しながら待っていてくれた。
「お帰り。早かったな、もう見つけたのか」
「リンは匂いでなんとなくわかるから」
「私なんか匂う?」
「うん。なんかスイカみたい」
「えー生臭い?」
「う~ん。ちょっと違くて、草っぽい匂い」
「やだー。草とスイカってカブトムシじゃない。イーサ、私臭い?」
「そんなことは無いよ」
とイーサは言ってくれたのに
「カブトムシは近いかも…もっと爽やかな水みたいな感じで、俺は好きだけど」
とアークは言う。泣きそう…
そんな日々は大好きな人たちの良い気を貰って穏やかに優しく流れていた。
ある日の夕方、早めに夕食を食べてイーサはちょっと疲れたからと言って薬湯を飲んで軽く伸びをして早めに眠った。そしてそのまま目を覚ますことはなかった。
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