イーサと別れてからミスティのテンションがおかしい。

 ギラギラした目で次々と私に服を着せたり、脱がせたりしてくる。

「かわいい!!イイっ!!これもっ」あとはなんかブツブツ言っててよく聞き取れない…。謎のテンションの精気を浴びると少しぐったりした。ナニコレ。


「さて、そろそろ兄さんと合流しましょう。リンがかわいくて驚くわよ」

 言いながら手をつないで歩き、薬屋が見えてきたところでミスティは私の手をほどいて叫びながら駆け出していった。

「兄さんっ!」

 様子がおかしい。


「やめて!兄さんを離して!!」ミスティが二人の間に割って入ると、男の人が「ミスティ!」と言って今度はミスティの方に覆いかぶさってきた。


 遅れて追いついた私は男の人の足にしがみついた「ミスティを放して!放して!!」

 男の人は動きを止めて私を見てミスティを見る。

「結婚して子供が?かわいい子じゃないか!かわいいなぁ」

 突然泣きながら私を高く掲げてくるくる回った。その後は少し記憶が無い。


 気づいたら良い匂いで、食事が目の前に並んでいた。

「気が付いたか?ごめんな」と言って男の人に頭をワシワシされた。

 悪い感じはしなかった。とりあえず落ち着こうとして目の前にあるお水を飲んだ。


 男の人はサニーというらしい、二人の知り合いみたいだ。三人でなにか話してるが、そんなことよりこのお水!シュワシュワしてる!冷たい!甘くて美味しいナニコレ!!


「二人とも元気そうで良かった。2年位前に俺も町を出たんだ、二人を探してたんだけど思ったより早く会えて良かった。こ・・・子供まで」

 とまた泣いている。

「かわいいでしょ~」

 ミスティは先ほど行った洋服屋のテンションであれこれ語りだしたが、イーサが途中で遮った。

「ミスティの子供じゃないが、訳あって家族だ」

「当たり前じゃない。町を出て3年でこの大きさの子供じゃおかしいじゃない」

「そうなのか!でもかわいい子だ」

 サニーはぱぁぁっと笑って、みんなも笑いながらご飯を食べた。

 スープも美味しかったけど、シュワシュワしたお水をもう一杯頼んでもらった。

 美味しい…。


「俺、しばらくこの街にいるから困ったことがあったら訪ねてくれ。また一緒にご飯を食べよう」

 サニーはそう言ってその日は分かれた。


「良かったのか?もっと話さなくて…」

「大丈夫よ兄さん。私とサニーはそんな関係ではないもの、面倒ごとには巻き込まなくて良かった」

「そうか…」少し暗くなった帰り道3人で静かに歩いた。


 服も靴も窮屈で、フワフワゴツゴツして纏わりつく変な感じなので、帰ったらすぐ服を脱ぎたかったけど、ミスティとイーサがかわいいと言ってくれるとなんか良いもののような気がしてきた。


 人間の姿の時は服を着るように言われたので、その日から寝る時以外は服を着る生活を始めた。

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