温かい水
ぼんやり目を覚ますと暖かいところにいた。体は清潔にされて、ふわふわとしたものに包まれていた。
目を開けていられなくてまた眠った。優しい声が聞こえる…
次に目が覚めた時は女の人と目が合った。
「兄さん!兄さん!!」
女の人が叫ぶとすぐに男の人がやってきた。
男の人は私を見て慌てて出て行った後、すぐいろんな匂いとともに戻ってきた。
「大丈夫か?水飲めるか」と言ってお水を飲ませてくれた。
がぶがぶ飲んだら「お腹も空いただろう」となんか良い匂いの温かい水を飲ませてくれた。
温かい水は味がついていて、中になにか入っていて美味しくて夢中で飲んで食べたら「最後に薬も飲もうな、少し我慢だ」と言って苦くて少し甘いお水も飲ませてくれた。
「美味しい。ありがとう」と言ったら二人はびっくりした顔をしたあと微笑んでくれた。
二人が本当に私を心配してくれるのが分かったので、私は安心して眠りやさしい精気をもらってすぐに元気になった。
二人は私が泉の側に落ちていて拾ったこと、私が言葉を話してびっくりしたことなどいろいろこれまでのことを話してくれた。
「私はミスティよ。こっちは兄のイーサ。あなたはこの辺で暮らしているの?」
「私はリン。ここがどこだか分からないし、どこから来たかもわからないの」
私は父と遠いどこかで暮らしていたこと、逃げろと言われてがむしゃらに逃げたことを伝えた。
「そう。お父さんは大丈夫かしら…」
「父さんにはもう会えないと思う…。すごく弱ってたの…それにあんなに血が…」
涙でびしょびしょの私の顔をイーサがタオルを持ってきて拭いてくれ、ミスティは優しく背中を撫でてくれた。
「とりあえず、しばらくはゆっくり休んで元気になりましょう。行くところがなければ私たちと一緒にここで暮らさない?私達も街にいられなくなっちゃって逃げてきたの。ここは山の中で兄さんと二人で寂しいの。兄さんは無口な方だし一緒にいてくれて話相手になってくれると嬉しいわ」
「でも私、雨を降らせる位でなにもできないの」
「雨を降らせるなんてすごいわ。この辺は雨が少なくって夜露も集めて大事に使ってるわ」
「でも私は雨は降らせても水を貯めることもできないし、温かくて美味しいお水も知らなかった。苦いのもびっくりしたけどすごいわ」
「じゃぁ私達、同じくらいすごいわね」と言って笑ってまた背中を撫でてくれた。
「歓迎するよ。暖かいお水はスープというんだ。苦いのは薬で甘くしたんだけどな」とイーサが言いながらスープを差し出しててくれて笑って3人で昼ご飯を食べた。
一緒に暮らすようになって、二人は優しい気持ちを向けてくれたので私は栄養をどんどんもらえたけど、父さんのことがどうしても悲しくて夜中うなされて泣き出したり、力がコントロールできなくて突然土砂降りの雨が降ったりした。
そんな私を心配してミスティは夜一緒に寝てくれたし、イーサは木彫りの人形を作ってくれた。
「かわいい。これ私?」
「お父さんを作ろうを思ったんだけど、よく知らなくて、お父さんのこと教えてくれる?」
「父さんはもっと大きくて角も尻尾も長くてツヤツヤなの。それでとても優しい目よ」
イーサは庭の小屋の隅でで私の隣に座り一回り大きい木彫りをもう一つ彫ってくれた。
秋の風が気持ちよくてイーサに父さんの話をいっぱいした。
大好きだったこと、優しいこと、ちょっと辛くても楽しかった日々のこと。
「また話してな」と言ってなでなでしてくれた。
一週間後に大きめの木彫り竜がもう1つ完成した。ついでに笛も作ったと言うのでその日は2人に歌を教えてもらった。
寂しい時は三人で歌ったり夜はどちらかの布団にもぐりこんで眠った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます