第4話 預言者と天使

昔、預言者がいた。

その預言者は、世界の終わりを主張して、嘘つき呼ばわりされて殺された。

いずれ、この世界は崩壊する

天災、流行病、経済の崩壊、未来への不安から人々は争い始め、殺し合う。

ありとあらゆる崩壊の要素が同時に発生して、すべてが無になる

食い止めるすべはない、世界の寿命だからだ。

ごめんなさい、ごめんなさい。

そこで本が終わっていた。


小屋は昔、少年が住んでいた家だった。

粗末ながら、親から受け継いだ家に住み、畑を耕し静かに暮らしていた。


ある日、野良仕事の最中に空から何か降りてくるのを見つけた。

人の上半身のようにも見えるが、1つの胴体に頭が4つの異様な姿だった。


「人間よ、よく聞け」

その異様な物体は、自分を天使と名乗った。

4つある頭の一つが少年に、この世の終わりを告げた。


どうやって人類は、そしてこの世界は滅んでいくのかを詳しく説明した。


「でも、それを知って僕は何をすればいいんですか」

少年の問に天使は答えた。

「何もしなくてもよい。きまぐれで教えてやっただけで、どうせすべて滅ぶのだ」

そういって天使は空へ帰っていった。


少年は、周りの人間にこの事を知らせ、新聞社に手紙まで送った。

預言者が現れたと面白がる人間もいたが、次第に手のひらを返したように少年を叩き出した。

少年は嘘つき呼ばわりされ、見に覚えのない罪で投獄された。

それまで住んでいた家は、服役中に何者かに放火され焼け落ちた。


少年は数十年後に刑期を終え出所した。しかし、その帰りを待っていたものは荒れ果てた空き地だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る