邪魔するぜ~っ!!

そうしてマヒルがアケボ達と一緒に風呂に入っていると、


「はっはっはーっ! 邪魔するぜ~っ!!」


ヤナカも風呂に入ってきた。それまで着ていた、アンダー部がキュロットタイプになったワンピース型の服を脱いで裸になっているのだが、全身をレモンイエローの羽毛で覆われているので、<裸>という印象があまりない。


なお、アクシーズは基本的に体自体も小さいことに加え、胸が小さい。これは、本来<アクシーズ>と呼ばれていた種族には翼があってそれで滑空する形ではあるものの空を飛んでいたことで、体を軽くする必要があったからだと思われている。ヤナカ達はその翼を持たないアクシーズではあるものの、胸の方はあまり大きくならなかったようだ。


まあその辺に触れるのは野暮なのでこれくらいにするとして、ヤナカはまったく恥じる様子もない。元々野生寄りのメンタリティを持つ上に羽毛に覆われていることで、


『肌を晒している』


という感覚がないからだろう。


しかも、


「お! みんな洗い終わったんだな!? じゃあ、私も洗え! マヒル!」


ちょうど、一番下のハクボが洗い終えられて浴槽に飛び込んだのを見て、ヤナカはそう言った。


「はいはい」


マヒルはためらう様子もなく笑顔で応えて、再び石鹸を手で泡立てる、そうして、


「ふんがっ!」


鼻息荒くマヒルの前に座ったヤナカの背中を、柔らかく洗い出す。すると、


「~♡」


ヤナカは心地好さそうに顔をトロけさせた。その表情は、今までの<ガサツ>と言ってもいいくらいに快活な彼女とは大きく印象の違うものだった。明らかに<色香>が漂っている。


けれどマヒルは構うことなく、丁寧に彼女の体を洗っていく。隅々まで丁寧に。


なのに不思議と、セクシャルな雰囲気はなかった。本当にただ幼い我が子の体を洗ってあげている父親のような雰囲気だけだった。ヤナカの表情以外は。


でも、だからと言ってそういう空気になるでもなく体を洗い終えて、マヒルは一旦手を洗い、再度石鹸を泡立てて今度はヤナカの頭を洗い出した。


「にゅふ~♡」


これにはヤナカも目を瞑って、子供のような表情になった。そして全身泡だらけの彼女に洗面器で掬った湯を頭からザーッと掛けていく。


こうしてヤナカを洗い終えたマヒルに、


「今度は私が洗ってやる! 覚悟しろ!!」


彼女が声を上げると、


「覚悟しろーっ♡」


浴槽で遊んでいたアケボ達も飛び出してきてマヒルにしがみつき、石鹸で彼の体をみんなでこすり始める。


大きな彼の体を洗うには、五人がかりでちょうどいい感じなのだった。


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