晩ゴハンだ!

「うんせ! うんせ!」


「きゃはははは♡」


ヤナカの弟妹であるアケボ、ユグレ、ヨイノ、ハクボは、マヒルの体に登って、腕にぶら下がって、頭から飛び降りて、また昇って、ということを繰り返していた。それがとにかく楽しいらしい。


鳥の意匠を持つアケボ達は、タカ人間アクシーズと呼ばれていた。厳密には元々タカ人間アクシーズと呼ばれていた種から派生した、いわば<亜種>なのだが、今ではこちらも含めてタカ人間アクシーズと呼ばれている。


朋群ほうむ人の中では比較的数が多い種族である。


性格としては快活でやや乱暴な傾向がある。なのでヤナカがマヒルに不意打ちを食わせようとしたのも、元々の種族的な性格の影響も大きい。そしてマヒルは、ヤナカのそういう部分も承知の上で付き合っている。


朋群ほうむ人達は、地球人などと比べるとずっと野生寄りのメンタリティを持っているので、乱暴だったりガサツだったりというのは、それほど気にしないのだ。


だからマヒルも、ヤナカのそういう活発なところが好きだった。


と、


「マヒル~! ゴハンできたよ~!」


家の窓から顔を出し、ヤナカが笑顔で呼んだ。


「うん! 分かった。じゃあ、晩ゴハンだ!」


「は~い♡」


「ゴハン~♡ ゴハン~♡」


マヒルの体にしがみついたまま、アケボ達が嬉しそうに声を上げる。マヒルも、そのままで家に入っていく。すると、家に入った途端に、


「ぴゃ~っ♡」


「ぎゃは~っ♡」


アケボ達がマヒルの体から飛び降りて、それぞれの席に着く。家の中はフローリングで、日本のように下ばきを脱いで上がるタイプの住宅じゃなかった。


と言うのも、そもそもヤナカ達は靴を履く習慣がなく、マヒルも基本的には履かないからだ。ヤナカ達の足には大きな鋭い鉤爪が生えていて、歩くのはあまり得意ではない。それこそ十分以上歩くことはほとんどない。


家に帰る時、ヤナカがマヒルに肩車してもらったのも、実はそういう理由があってのことだった。


ちなみに椅子に座る時も床などに足を着けるのではなく、タカ人間アクシーズ向けの椅子に設けられた横木(止まり木とも呼ばれる)を足で掴むようにして座る。それが楽なのだ。


なので、タカ人間アクシーズの多くは、敢えて床板を張らず、根太ねだの本数を増やしたりして枝を渡るように歩けるようにした家に住む。その方が歩きやすいからだ。


その点、ヤナカ達は、マヒルがこうして家にいることも多いので、敢えて彼に合わせて、ダイニングについては床板を張り、リビングなど他の部屋は根太が剝き出しになっている。


「いたただきま~す♡」


テーブルに並べられた、<猪竜シシ肉のロースト>を前に、ヤナカ達が声を上げ、


「いただきます」


マヒルも手を合わせたのだった。



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