Ⅲ その男は語りき『あなたは・・・』

 アハアハアハアハア。

 なんだなんだ、そんなに驚いたような顔をするなよ。

 そこに書いてある通りさ。残念ながら、あなたは『馬鹿もの』なんだよ。


 自称『賢きもの』か。

 よかったじゃぁないか・・・自分が馬鹿であることに気づけたんだ。

 これこそ、『無知の知』ってやつだな。


 読んでる途中で思わなかったか?

 こんなくだらない書、読むのも馬鹿馬鹿しいと。

 

 いやいや、表紙を見て嫌な予感を感じたはずだ。

 『ばかものが読む書』って読めなかったか?

 普通なら、そうとしか読めないはずなんだがな。

 

 世の中、自分が馬鹿であることに気づかない人間がなんと多いことか!

 自分は賢いと思いこみ、したり顔をしている奴らが多すぎる。


 だからな・・・この書を書いたんだ。自分の実体験も含めてな。

 恥ずかしかったよ。自分の馬鹿な行為を書き記すのは・・・恥部をさらけ出すような気分さ。そうだよ、あの部分さ。あの・・・だよ。

 ああ、思い出すだけで、顔から火が出る。でも、事実だから仕方ないな。

 

 ウフフ、まあまあ、怒るなって。

 馬鹿にされたからといって怒るのは、本当の馬鹿がすることだと思わないか?

 自称『賢きもの』を名乗るのであれば、もっと余裕を持った応対をしないと。

 だから、どうか・・・その力強く握りしめた右手の拳を納めてくれたまえ。


 ちょっとした悪戯だよ・・・悪戯。

 きっと、自称『賢きもの』ゆえ、わざとひっかかってくれたんだろうねえ・・・。

 そうそう、あなたは・・・ただの馬鹿でなく、ただのお人好しなんだよな。

 まっ、そういうことに・・・しておこう・・・なっ。


 おいおい、満更でもない顔をするなよ。

 忘れたのか? 書いてあっただろう。

 やっぱり、あなたは・・・だな!

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賢きものが読む書 @Ak_MoriMori

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