第14話
「雨音ごめん。今日もまた推敲呼ばれてる。」
紏柚は感想文が学年の代表に選ばれたらしく、最近忙しそうにしている。
「うん。分かった。頑張ってね。私も委員会あるから。」
「分かった。」
彼の告白から数日。
あの告白が私の夢だったのではないだろうかというくらい何事もなく日々が過ぎている。
紏柚は相変わらず女の子にモテているし、私はまだ彼に好かれる努力を続けている。
さすがにもう彼に好かれているというのはなんとなく実感してきたけれど、まだ全然確信には至らない。
あの女の人が紏柚のお兄さんの彼女だからと言ってもあのスキンシップを見たら安心できるわけがない。紏柚に気がなくとも…なんて性格の悪いことを考えたくはないけどその可能性は大いにある。
「篠原さん、準備大丈夫ですか?」
「あ、木南くん。呼びに来てもらわなくても遅れたりしないのに。」
「いえ、篠原さんが時間にルーズではないことは分かっていますよ。この間は篠原さんの彼氏に失礼な態度をとったかなと1人で反省していたんです。ご挨拶をと思ったんですが、いらっしゃらないですね。」
「彼氏って紏柚のこと?紏柚は彼氏じゃないよ。今は職員室に行ってる。」
「そうだったんですか?てっきり彼氏さんだと。うちのクラスでも噂になってましたよ。」
そう言って笑う木南くんに眉を下げて笑い返すしかない。
「まぁいらっしゃらないのであれば仕方ないですね。これはこれで都合がいいです。行きましょうか。」
そう言って教室の出口に歩きだした彼を慌てて追う。
木南くんの後ろを歩きながら先程の言葉を思い出す。
なんの都合がいいんだろう。
よく分からないけれど、木南くんが紏柚と仲良くなろうとしてくれているのならいいなぁと思う。
紏柚から聞く名前はお兄さんばかりだから。
「ぶっっ!」
下を向きながら考え込んでいたせいで、目の前で立ち止まっている木南くんに気が付かなかった。
勢い余って顔面から突撃してしまう。
「あっ、大丈夫ですか篠原さん!すみません声をかけたら良かったですね。」
「あ、いや私が考え事しながら歩いていたのが悪いの。当たったのが木南くんでよかったよ。車だったら死んじゃってるよね。」
おどけてみせると、彼は心配そうに顔をのぞきこんできた。
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