第13話

「綾瀬さん!」


話す内容がないまま、紏柚と家までの道を歩いていると、後ろから声をかけられ振り向く。


「木南くん。どうしたの?」

「あ、いえ。」


何故か紏柚を見て苦笑いをしている木南くん。

紏柚を見ると、再び能面のような顔を貼り付けている。


「…………誰?」


無表情のまま口を動かす彼は、まるで人形だ。


「木南凌くんだよ。隣のクラス。」

「そう…。仲、いいの?」

「え?うーん。それなり?委員会が同じだけだしね?」

「…そうですか?放課後を一緒に過ごす仲ではありますけどね。この間は一緒に帰りましたけど。」

「お花の水やりね。」

「また今度迎えに行きます。」


"気をつけて帰ってくださいね。"と言って木南くんは行ってしまった。


「なんだったんだろう。すぐ帰っちゃったね。」

「俺は、その方が嬉しいかも。」


ため息をついて歩き出した彼の心理を知る術は今の私には無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る