第8話

「雨音〜おはよう〜。」

「おはよう〜。」


すれ違う友人たちと挨拶を交わしながら自分の席に行くと、紏柚はまだ投稿していないようだ。

鞄から例の手帳を出して、彼の机に置く。


「雨音、おはよ。」


手帳から手を離した瞬間に、紏柚が自分の席にくる。


「おはよう。昨日の女の人すごく綺麗な人だったね。」

「みく?可愛いとは思うよ。俺は、雨音の方が綺麗だと思うけど。」


"みくは見慣れたし。"と珍しくふてぶてしく言い放つ。

その様子が珍しく、可愛らしいので笑ってしまう。

好きなもの以外に興味がなさそうに見えて、実際は、彼なりに受け止めて消化している。

それが、表情で垣間見えたとき私の心は不覚にも動かされてしまうのだ。

紏柚が誰を好きでも気持ちを伝えたいという気持ちは膨らんでいく。

そのためには、少しでもコンディションを整えなくては。

私は小さく頷いて、心の中で拳を突き上げた。

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