第4話

それからというもの、紏柚と私は毎日の下校を共にする仲になった。

と言っても特にどこかに行く訳ではなく、空を見て、たまに川の眺めて帰宅する。

それだけだ。

でも、その時間が私にはとても心地が良かった。

確かに、友人が言うように紏柚が考えていることは分かりづらい。でも、彼が好きなものを見ている時の彼の瞳はとても穏やかで、何となく考えていることがわかるような気がした。


「雨音。」

「どうした?」


帰路の途中、紏柚が私を見て止まる。


「楽しい?」

「楽しくはないよ。でも、紏柚が好きなものを見ているところを見るのは楽しいかな。」


笑ってみせると彼も笑う。


「雨音は何が好き?」

「…分からない。勉強?」


昔から趣味など何も無い。

ただ、聞かれて直ぐに思い浮かんだのは、紏柚だ。

私の好きな物は紏柚なのか…?どういうこと?

私は紏柚が好き…?

唸っていると"どうしたの?"と彼に聞かれてなんでもないと伝えて思考を停止させる。

…まさかね。

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