第2話

「どうしたの雨音。」


放課後。

この後どこに行くかという会議で賑わっている教室で、私は数人の友人と単元テストの勉強をしている。

綾瀬は今日も空を見上げつつ、手帳に何かを書いているようだ。


「綾瀬ってなんか気になるなぁって。」

「綾瀬〜?何考えてるか分かんないじゃん。うちの彼氏が話しかけたけどまともな会話が出来なかった的なこと言ってたよ?」


友人は、バカにしたような呆れたような笑い声を漏らす。


「そうかなぁ。綾瀬って横顔綺麗だよね。」

「えっ何雨音、綾瀬のこと好きなの!?男なんて全く興味ないですみたいな顔して恋しちゃってるの!?」


"もう夏なのに春来ちゃってるの!?!?"と大騒ぎする友人を宥めて、手元の教科書に視線を戻す。

別に気にはなっているけど恋愛感情を持つほど私は彼のことを知っている訳では無いし。


「そもそも話したことも無いはずだし。」

「え。そんなことないでしょ。雨音は1回綾瀬と話してるはずだよ。」

「えー。そうだっけ?覚えてないよ。」

「そんなに気になるなら話しかけてきなよ。ほら立って。」


椅子を引かれ、仕方なく立ち上がる。

同世代の女子はすぐなんでも恋愛に結びつけようとする。

これだから若い女は。

にやにやと面白がっている視線を感じながら綾瀬のもとに足を向ける。


「あの、綾瀬。どうしていつも空を見てるの?」


特に話題は無いので、同じクラスになって数か月ずっと気になっていたことを聞いてみる。


「金魚鉢に閉じ込められた気分になるんだよね。そう思わない?雨音。」


彼は、綺麗な瞳に青空を映したままそう言った。

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