第16話 さあ高々と名乗りをあげよう!!
『もう一度言いましょう、わたくしの名は、フィ・ヨルティア。太古の時代、この大陸の片隅で最強を認められた者だけが名乗ることの出来る名です』
ティアの語り、いや煽りが続く。
『ちなみに人間ではありません。皆様には想像も出来ないでしょうが。まあそうですね、当機に宿る精霊とでも思って頂ければ、概ね間違っていないかもしれません』
「何を戯言をおおおぉぉ!!」
おおっ! やっと相手方から反応があった。えっとあれは、頑張れ『仮称漢通信』!!
『現地呼称、トルヴァルト王国バンドラム伯。その様に語気を荒げては、王国の威信が陰りますよ』
どうやらティアの煽りは継続中らしい。
「なにぃぃ!!」
『では、わたくしの名乗りは終わりましたので、次は当機のパイロット、いえ、操縦者、貴方がたから言えば騎士のご紹介といきましょう』
煽るだけ煽って、こちらへハンドオーバーかよ。きっついなあ、ティア。
「あのさ、酒って出せる?」
『出来ますが、飲酒操縦をするのですか?』
「そこまでは言わないけど、なんかこう勢いが欲しくってさ」
『了解しました。ただし、戦闘機動時にはアルコール分を強制的に排除しますからね』
「オカンっぽいぞ」
『はい、ではどうぞ、こちらではある程度上級のワインです』
目の前にぽわんとボトルが現れる。慌てて受け取り、そしてラッパ飲みだ。結構イケるじゃないか。
「戦場にお集まりの皆様にご挨拶をさせていただきます。自分はアルファンド。ちょっと前まではアルファンド・ハイバーンと呼ばれていました。要は、フィルタルト王国のハイバーン侯爵家の一員でした。そうですよね、父上?」
「アルファンドなのか!? 不適格な貴様がなぜこのような場所に。いや、それはなんだ? その矮小な精霊騎はなんだ!?」
やっとこさ父上の言葉が聞けた。『漢通信』万歳。
「矮小? この大穴を空けて、湖を新しく作るような、そんな存在を矮小とおっしゃりますか? この水面に浮かぶこの機体を、父上はどう思われますか」
「……貴様、何をする気だ」
「八つ当たりですよ」
「なにぃ!?」
「だから、八つ当たりですよ。なんかこう、ここまできたらざまあぁぁぁぁ! とはちょっと違うかな。力の差がここまで大きくなったら、アホらしくなっちゃいましてね。八つ当たりして、憂さ晴らしして、それでトンズラここうかと思っています」
◇◇◇
本心だ。
だけど、このままでは足りない。見せつけなければいけない。思い知らせなければいけない。この世界の連中に。
だから、名乗る。
当初は、「ロウバーン」と名付けるつもりだった。実家の侯騎が、親父が乗っている騎体が「ハイバーン」だったから。嫌味を込めて、そうしようかと思っていた。
だけど今は違う。この機体はロボットは、そんな安っぽい動機で名乗るものじゃない!!
「いくよ……、ティア」
『了解、ではないですね。受け止めましょう、アルファンドの名乗りを』
「こいつは精霊騎なんかじゃない!! 第7世代型世界間超越マルチロール戦略ロボット、機体コードGX-0078-002X!! 固有名称、ウィルバーン!!」
高らかに叫ぶ。希望の名を載せた、この機体の名前を。
「もう一度言おう。この機体の名は『ウィルバーン』!! そして俺の名は『アルファンド』だ!!」
始めるぞ。八つ当たりを。
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