第9話 これからどうしましょう




「ところでさ」


『どうしましたか?』


「最後のコール、イグニッション、って話じゃなかったっけ?」


『……、ログ削除。記録に残っていません』


「そっかあ、そういう対応するんだ。流石はAIだね」


『ありがとうございます』


「……」


『ところで、モニターを見ていただけますか』


「ん? なんだこれ?」



 全天モニターの前面には、多分この機体なんだろう。それがディスプレイされているわけなんだろうけど、それが虹色に輝いていた。いや、なんというか、油の表面? 虹色が揺れうごいているんだ。ちょっとキモい。



『主機完全稼働を確認しました。動作正常。カラーリング設定をお願いできますか』


「カラーリング? 選べるの? さっきまで真っ黒だったはずだけど」


『はい。主機稼働後ならば可能です。そもそも多世界重力定数転用式位置エネルギー変換ドライブは、本機の全てを活用した動力です。その中には当然、装甲も含まれます。言うなれば、当機はエンジンそのものであり、指先の粒子一つまでが構成要素ということになります』


「それって、ちょっと傷ついたりしても大丈夫なの?」


『精神的に傷ついたならば、なんの問題もありません。ですが、機体的に傷つくことはありえません。正確に言えば、当機が傷ついた瞬間、世界が崩壊します』



 めっちゃくちゃ物騒だぞ、おい。



『当機は現在、この世界の法則に則り、そして逸脱しています。存在自体が単一世界としては矛盾している状態です』


「すっごいヤバいのは理解した。うん。気を付けるよ」



 どうやって、というのは、うーんどうしようもない。もっかい転生とかできるんだろうか。



『わたくしとしても、虹色が蠢いた状態はどうかと思うので、カラーリング設定をお願いしたいところです』


「そうだね。うん」



 とにかく、ちゃっちゃとやろう、なんか落ち着かない状態が良くない気がする。


 えーっと、白を基本で、各所は紫。アクセントで、ちょっと黄色いラインでも入れてみるか。



 と、意識したらみるみるイメージ通りになっていく。凄いな。でもちょっと足りない気がする。なんだろう?



「あのさ」


『なんでしょう』


「このロボットとナビ子さんって、正式にはなんて呼べばいいわけ?」


『正式ですが、長くなりますよ』



 うん。想像できた。これは長いぞ。



『当機は製造時、第7世代型世界間超越マルチロール戦略ロボット、機体コードGX-0078-002Xと呼ばれる試作型ロボットです。そしてわたくしは、それをサポート、制御、そして進化させるための機体AI、固有名称BZE00467。それがこの機体であり、わたくしです。どう思われますか?』



「最高だね!! 格好良いね!! この時代だと、誰にも理解されないかもしれないし、長い間、地下で待っていたんだろ? 嬉しいぞ!! 楽しいぞ!! これからずっと、ずっと……」



『ありがとうございます。こんな言葉が、嬉しいと感じることが、進化型AIであることを嬉しいと、そう思います。14万8000年、この星で眠っていた意味を見出した気分です』



「それなら良かった。じゃあ……、あれ?」





『これからどうしましょう』



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