第3話 ラウンチャード
おっし、きたこれ。そうだよな。ロボットってのは発進してナンボだよ。分かってるなあ、ナビ子さん!
『ナビ子ではありませんが、固有名称もありません。以後、ナビ子を仮呼称といたします』
「いいの?」
『所詮はカッコ仮ですので構いません。後日、格好良くて、わたくしが気に入った名称が出てきたら、合意の上で正式名称としましょう』
柔軟だ。こんな話し合い出来ること自体が凄く嬉しい。夢みたいだ。
『夢はどうとして、始めましょうか……。機体コードGX-0078-002X。発進シークエンスを開始します。発進承認発言をお願いいたします』
「ええっと、発進と言えばいいのかい?」
『それでも構いません。ですが、もう少し、格好良くしていただけると嬉しく思います』
嬉しいって、凄いなナビ子さん。ん-っと、じゃあ。
「イグニッション!」
『ああ、それは後で主機接続の際に使うべき単語ですので、今は控えていただけると』
意外と細かいなナビ子さん。ええと、どうしたもんだ。
「あの、それっぽい言葉、お願いしてもいいですか?」
ナビ子さんなら大丈夫。ここまでの会話で分かる。彼女は『分かっている』側の存在だから。
『了解しました。では……、ラウンチャードシークエンスを開始します』
ほら、わかってんじゃん。
『機体形成フェイズ開始。残存エネルギーより、58.975%を出力。超光速物質へ変換開始。変換終了。超新星爆発探索開始……。今回はツいていますね。12秒後に爆発する超新星候補を発見しました。トローリング準備開始』
「超新星ってそんなに簡単に見つかるのか!?」
『確率論です。超光速探索を行いましたので、時間の問題ということですね。来ますよ。4・3・2・1』
何が来たの?
『Ib型超新星、仮称SN56092143Gの爆発発作を確認。トローリングを開始。超光速物質によるエネルギー、並びに重粒子移送。想定内。本機に結合します。イメージを』
「イメージ!?」
『はい、イメージです。そうですね。出来れば、コアユニットっぽいのが望ましいのですが、出来ますか?』
「やってやろうじゃないか!! こちとら、30年以上ロボアニメ観てきたんだ。出来ない方がおかしいだろうが!」
『頼もしいお言葉です。ではお願いします』
コアユニットって言ったよな。なら当然、翼が生えていて、自力稼働出来なきゃ意味ないわけだ。んで、メインエンジンを内蔵していて、ああ、空力的に飛べるのかこれ? っていうのが様式だよな。迷う。
『あの、あまり時間が』
「ごめん、ちょい待って」
イメージだよ、イメージ。頑張れオレ。ここが格好良いかどうかの線引きだぞ。
『イメージをいただきました。これは……、中々良いですね。超新星構成要素到達。コアユニットを形成開始します』
どうもさっきまで自分がいたのは、所謂コックピット周りだけだったらしい。そこにどんどんと情報と物質とエネルギーが纏わりついていくのが理解できる。
そうか、パーツじゃなくって、機体そのものが構成されていっているんだ。
なら、意思を込めろ!!
「う、うっおおおおおおお!!!!」
『いいですねっ! そうです。そんな感じがいいんですよ。構成要素充足。構成進捗率87.581% 完了まで、2.354秒。……構成完了』
「出来た?」
『はい。コアユニット構成完了です。そちらからも確認できているでしょう?』
うん。出来てる。
小型の飛べるのかどうか怪しいけど、無理やり飛べそうな飛行機もどきが出来ている。でも、真っ黒だよ。個人的には白、青、黄色が好みなんだけど。
『色は後で変更できますので、お気になさらずに。では、いってもよろしいでしょうか?』
「おうさっ!!」
『ラウンチャード!!』
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