第2話 発進シークエンス、準備完了!!




 階段はしばらく続いた。真っすぐでもなく、螺旋でもなく、妙な弯曲をした階段を30分程降りただろうか、そこにあったのは、単なる行き止まりだった。


 ただし、そこにあったのは、例の精霊騎士適正鑑定の時にあったのとよく似た石板だった。良い思い出など欠片もない。またここでも判定されるのか? 嫌だな。


 どの道、他にやることもないので、石板に触れてみる。何かしら反応してくれると嬉しいんだけど。



 次の瞬間、優しい、お姉さんっぽいハスキーな声が響き渡った。脳内なのか、それとも。とにかく不思議な響き方な気がする。



『判定。BZE00467、資格判定プロトコル走査開始……、不適格、不適格、不適格……』



 うわぁ、凄いネガティブな単語を連呼された。ここでもダメか。何のための異世界転生だったのやら、ホントキツい。



『……超越世界因子確認。詳細走査……、物質超越適合判定開始。界面との適正……、条件付許容範囲内。よって本人意思確認。貴方は当機の登場を望みますか?』



「望む。幾らでも繰り返すぞ。望むよ。絶対望む。今更、却下とか駄目とか言うなよ」



『最終意思確に』



「くどい!! 望む。乗る。俺にやらせろ!!」



『搭乗者適正として、拙速、情緒不安定が不安ながらも、適正ならびに本人意思を確認』



「そうだよ! 拙速だ、不安定だ。だけど……、意思だけは、決意だけは届いたろ? 届いてくれよお!!」



『ようこそ、新しき搭乗者よ。わたくしも、貴方をお待ちしておりました』



 とたん、足元が崩れ去り、俺は暗闇に落ちていった。



 ◇◇◇



 暗闇、暗闇を落ちていく先にあったのは、漆黒だった。暗闇どころの話じゃない。なんだこれ。


 そして、叩きつけられたかと思った瞬間、その漆黒の壁は、優しく俺を迎え入れてくれた。



『準適正搭乗者、確認完了』



「ちょっとまて! 真っ暗なままだぞ。こんなんで……」



『意識走査開始。完了。感性はこの時代よりか、随分と進んでいますね。適正化残存エネルギー……0.000028%を使用。制御フレーム形成。どうしょう、座り心地は』



「うん、最高ってちょまっ」



 いつの間にか、俺は椅子に座っていた。いや、椅子じゃない。包み込むこの感じ、フィット感、これ、コックピットってやつだろ。



『全天球コンソールタイプ意思伝達デバイス操作型コックピットを用意いたしました。では、どうぞ』


 どうぞって、うん。如何にも手足を突っ込んでくださいと言わんばかりのなんかジェルっぽいのが両手足の先にある。というかなんでプカプカ浮かんでいる。

 これ、痛いやつか? 突っ込んだ瞬間に首とかにもバシンバシン来るのは勘弁してもらいたいんだけど。



『想像するのは自由ですが、痛くはありません。そして、操作方法はご想像の通りです。ではどうぞ』


 ここまで言われてやらん訳にはいかない。恐々両手足をジェルっぽいのに沈ませていく。



『物理的接続を確認。基本操作マニュアル、圧縮文章、結構多いですよ転送。展開……』



「うほっ、ふほおおぉぉ!!」


 これも良くあるパターンだ。頭の中に色々入ってくる。ただ幸いなことに痛くはない。




『では、はじめましょうか』



「な、なにを?」




『もちろん、発進シークエンスです』



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