第11話


 目が覚めたとき私はひどく絶望した。死ぬまでが計画だったためその先のことなんて考えてもみなかった。

 体に目立った傷が残っていないのを見るに早々に救出されたようだ。思いの外旧校舎は燃えなかったのか。となると瀬浦らも生きてこの病院にいるのではないか。全ての計画が失敗に終わってしまったのではないか。そんな不安が湧き上がってくる。

 近いうちにアパートに残してきた犯行声明と遺書を見た警察がやってきて私は連れていかれるだろう。だが元から死んでいた命だ。どんな罪名であろうと、何年かかろうと構わない。全ての罪を償い終えた時、何も変わらない日々の中でまた真紀と2人で生きていこう。そして今度こそ姉らしく真紀を守っていこう。

 

 病院のロビーに出るとテレビであの日のことが取り上げられていて真っ黒な瓦礫の山と化した旧校舎が上空から写し出されていた。キャスターが抑揚のない声で4人の生徒が亡くなったと言った時、違和感を覚えた。

 4人? 3人の間違いではないだろうか。だがいずれにせよ連中への復讐は計画通り果たせたようだと一息つく。

 報道の最後に亡くなった生徒の名前が並べられた。瀬浦晃一、近藤修哉、原勇志。私が殺めた3人の生徒のほかにもう1人。

 その名前を見て私は愕然とした。容疑者であるが亡くなったことになっているのだ。

 何が起きているのかもわからないまま胸の奥から込み上げるざわめきを吐き出すようにトイレに駆け込み鏡を覗き込み、そこに映った顔を見て愕然とした。

 震える指先でそっと頬をなぞる。痣のない白い肌。落ちてきた涙の生ぬるい感触。あのときの真紀の言葉を思い出す。

「これからは自分のために生きて」


 私は水谷真紀になっていた。

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Sacrifice みふね @sarugamori39

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