「彼岸」その3

 丁度ホームに入ってきた目的地の電車に乗れた。

 駅の外から電車がよく出入りしているのは見えていたが、この線は利用客が多いらしく、特に頻繁に出入りしているようであった。

(しかし…)

 さっきから不思議に思っていたことが、ため息と一緒に漏れる。

(死後なのに近代的過ぎないか…?)



 駅構内には当然のように駅ビル、コンビニ、お土産屋などがあり、み○りの窓口っぽい案内所もさも当然のように入っていた。

 度肝を抜かされっぱなしだが、1番ショックなのはー。


「Su○ca…」

 電子マネーで乗れた。

「いやおかしい!まだ日本で実装されてない駅もあるぞ!?なんでここで使えるんだよ!」

 思わず声が出てしまった。周りの人…、人魂?達がこちらに注目した…気がした。

 うちの実家では、電車に乗る時未だに切符を切る駅員さんがいる駅が最寄り駅である。技術レベルの格差がこんなところにも現れていたとは…。

(とりあえず電車に乗ってから考えよう…)

 おもむろにスマホを改札にかざして通る。聞き慣れた音と共に改札口が開いた。



 彼岸の技術革新に面食らいながら、何とか今に至る。

(…というか癖でスマホ使ってたけど、電波もここ届いてるんだよな)

 画面を開いて見ると、電波を示す記号がいつもと変わらず点いていた。

 しかし時間の表示がバグっており、現在時刻は分からない。

(…現在地)

 マップを開くが、これも駄目だった。現在地の表示があらぬところを指しており、かと思ったらすぐに違う場所に飛んだりしていた。

(これで、地球上のどこかではない。ってことは確かになった)

 改めて自分が違う世界ー。死後だか彼岸だかの世界に来ていることを実感する。

(…なんか変な感じだ)

 先程からの、現実にもあるような施設、まるでいつもと変わらない行動ルーチン。しかし非現実的な表示、人の形がない人々。

(「生きている」のか…、「死んでいる」のか)


 ふと周りを見渡すと、先程の老人のような人魂がところ狭しと電車内に並んでいた。

(…これが現実だったら、通勤時間の満員電車くらいだな)

 そう思って見渡していると、中には。


(…人?)

 人の形をしたものがいた。



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