第12話

ジェット風呂も電気風呂とは違い、足が伸ばせる長椅子のような形状で立ち上がりやすいように各場所に手すりが設置されている。


そして、反射口は肩に当たる所に2つと足の裏に当たるように吐き出す2つの合計4つあった。



「ふぉおおお。」



電気風呂であり程度ほぐれていたようで、体を震わせながら気持ちよさそうにオオダは声をあげていた。

その間、ミナトはと言うと…。




「気持ちよさそうで何よりだよ、オオダドン。」


「あれ…ミナトも一緒に浸かってなかったっけ?」



オオダの座るジェット風呂の横にある普通の湯船にいつの間にかミナトが浸かっていた。

ぉおっとビックリしていたオオダだったが、肩を軽くさすっているミナトの様子をみて彼女が移動した理由を察する。



「ぁあ、痛かったのね。」


「…うん。」



ミナトは珍しく素直に2つ返事で答えた。

彼女はイジケルように顔を少しだけ沈めてブクブクと息を吐きだしている。



皮膚は弱いミナトにとってジェット風呂の勢いはきつかったようだ。

クスッと笑いオオダはミナトの頭をポンポンと叩く。



「よしよし、体も温まってきたし外に行こうね。」




オオダに連れられゆような形で露天風呂に向かう2人。

混む時間帯なのか屋根付きの大きな湯舟は常連であろう人達がたくさん入っていた。



ならばと、人が入っていない壺風呂に2人はそれぞれの壺風呂に入る。



「さて、話は大いに戻すけど…今度の旅行はどこにいこうか。

車をレンタルする?」



壺風呂から身を乗り出すようにオオダはウッキウキで話を切り出した。

そういえば、ハイエースの中でそんな話をしたな。



「そうなぁ…。

いや、まってレンタカーって事は、来年の春先の話だよね?

気が早くね?」


「ううん、ウチは来月でも一向にかまわん。

ミナトの誕生日も近いしぴったり。」



フンスとイキイキと答えるオオダ。



「まてまて、冬の山道を初心者が走れるかぁ!」



ミナトも驚きで壺風呂から身を乗り出す。

しかし、旅行に行きたいと言うオオダの意見は変わらない。



「わかった、車を運転しないって事で妥協しよう。」


「よしきたっ!」



やれやれとそうミナトは妥協すると満足そうに彼女は満足そうに頷く。


となると…バスか電車しかない。

あんまし公共のバスや電車の移動時間が長くてもなぁ…。



「定山渓?」


「パス。

札幌から解き放たれたい。」



うーんと腕を組むミナト。



「そしたら、お風呂から上がってお酒でも飲みながら調べますか。」


「さんせー!」



ミナトの提案に、満足気に右手を上げてオオダは返事をする。

まぁ、調べるも何も札幌からさほど遠く離れていない温泉地など限られているからアルコールが入っても問題ないでしょう。


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