第13話 交渉
「お願い?」
「そうそう。少し長くなるから座って話し合おう」
目の前の卓に腰をかける。ふぅ、今日一日で初めて落ち着けた気がするよ
「………」
「ほら、座りなよ。あ、他のみんなも座らせてあげた方がいい?」
「いや、構わない…」
レイマンくんも渋々って様子だけど座ってくれる。ちなみに、彼の仲間たちを拘束しているのは、闇系統の魔法で
昔はよくこれを使ってイタズラとかしたなー。べつにこんな回想なんていらないか…
「それで、お願いとは?」
「あー、それね。直球で言えば俺の手伝いをして欲しいんだ」
「手伝い?」
今回は勧誘やら興味があったとかで来たんじゃない。正真正銘、仕事としてきたんだ!
「うん。今王国が出してる大掛かりな依頼あったでしょ?その目標を誰よりも早く入手して欲しい」
「…それで、それをお前に渡せと?」
「え、なんで?」
「はっ?」
「え?」
いやべつに俺が欲しいわけじゃないし。欲しいっちゃ欲しいけど、それも王国に勇者を召喚してもらうためだから
「とりあえず!君らがそれを一番最初に成し遂げてくれるだけでいい!」
そうすれば他の勢力に奪われることもなく、王国がちゃんと召喚してくれるさ
「けど、その際に入手した依頼物を渡すのは、今都市に来てる王女にして欲しい」
あの依頼って国が出したものだけどヨークが責任者だから彼に渡ってしまう
俺に喧嘩売ったんだから何事もなく終わらせてやるつもりもないし、彼に名誉なんざ与えてたまるか!
できる限り苦労してもらって、壮絶な最期を遂げてもらうとしよう
「…それには理由が?」
「それを知る必要ある?」
ちょいちょいと彼の仲間を指差して尋ねる。言ったところで関係ないし
「元々君らも受けるつもりだったでしょ?だったらやることは変わらない!誰よりも早く入手して、ただヨークって奴に渡さず王女様に渡せばいいだけ。簡単だろ?デメリットもない」
「…………分かった。君の手伝いとやらをさせて貰うよ」
「うんうん!それはありがたい。成功できたらこっちから報酬も出すよ!」
彼もこの都市では強いらしいしやり遂げてくれるだろう。これで俺がやる事と言ったらヨークを懲らしめるだけだ。
そろそろ彼の仲間も解放してあげるとしようか
「きゃっ!?」
「おわっ!?!?」
手が無くなった事で身体を支える物がなくなり全員バランスを崩して尻餅をつく
「じゃっ!俺は帰るよ、あとはよろしくね」
「待てっ!!」
「…ん?なんかあんの?」
こっちは話すことも終わったしノアやミロ待たせてるから早く帰りたいんだけど…
「おまえは……。いや、君は何者だ……?」
「何者、って言うのは?名前、種族、呼び名、etcあるけど、何が聞きたい?頼みを聞いてくれたお礼に一つだけ答えてあげる」
「僕が、聞きたい事は————」
————
くくっ、今思い出しても笑いが込み上げてくる
「さっきから何笑ってるの?」
「ディー、なんかあった?」
別の酒場に入り三人で食事をしながらさっきの事を思い返す
「いやね、ついさっきあったレイマンって奴の事なんだけどね。一つ聞きたい事に答えるって言ったらなんて答えたと思う?」
「そんなに面白い質問なら、年齢とか?」
「好みの食べ物」
「ぶっぶー」
「なんかムカつく…」
そんな殺気の篭った視線を向けなくても…、これでも組織のボスだよ?。よくよく考えたらウチの組織の上下関係緩すぎだろ
「答えはね
『貴方は、勇者ですか?』、だってさ!!」
「「はっ?」」
「うんうん、そうなるよね。はははっ!!」
なんであの状況でそう思ったんだろうな。
仲間を人質に取られて、訳の分からないお願いをされて、本当に意味がわからない
それに、俺が勇者?
はっ!笑い話しにもならないだろ。俺はこの世界で魔王以上に勇者から遠い存在なのにな
「いやー、久々にそんな褒められ方をしたよ」
「いや、褒めてはないでしょ」
「ソイツの、頭覗いてみたい」
ほらね?この二人がこんな信じられないみたいな顔で言うだけの事はある
「ふぅー、気分がいい。今ならヨークも許せてしまえるかも!」
「むっ、それなら私が——」
「いやそんなこと無かった」
君がやったらダメなんだって。最悪都市一つくらい消してしまいかねない
「よぉーし!明日からも頑張ろう!」
「おー」
「………」
俺の真似をしてノアが手を振り上げるがミロは冷めた目で見てるだけだ
「ほら、ミロも」
「………」
「上司命令」
「……おー」
ノアからここまでお願いもとい脅迫されてようやくミロも拳を振り上げる。いや、ノアさん、君、ちょっと睨みすぎでしょ、ミロとか少し震えちゃってるし…
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