第11話 尾行者

最後まで話しを聞いてしまったけど、なんとか帰してもらえた。


『いい?今度ちゃんとお礼はするから!』


って去り際に言ってたけど、できればもう会いたくない


それより、帰してくれたのはいいんだけど、あの貴族、無事に済ます気はないらしい


「ディー、まだいるよ」


「知ってる。どうしたもんかな」


さっきから尾行されている。しかも一人二人どころじゃない。確実に俺らのこと口封じに来てるだろ


まだ何も行動を起こさないのは俺とノアが人の多い大通りを歩いてるからだろう


これが一度路地裏に入るか宿に帰ろうものならすぐ様襲ってくるんだろうな


「…仕方ない。ここで全員仕留めるか」


「やっていい?」


「だめ」


「むー!」


「そんなに膨れてもダメなものはダメ」


ノアって大雑把だから戦闘もそこら辺に被害が広がってしまう。それに加減も出来ないから正しく災害だな


「俺がやってもいいけど、今回はミロに頼るとしよう」


さっきから暗殺者に紛れて俺らについて来てる。隙を作ってやれば仕留めてくれるでしょ



あえてノアと二人で人通りの少ない方を選んで進み、人目のつかないような裏道を通る


「止まれ」


来た。振り向けば黒装束に身を包んだ人物が道を塞いでいる


「はて、なんでしょうか?」


「恨みはないが、死んでもらうぞ!」


コイツが突っ込んで来るのかと思いきや、既に周りを取り囲んでいた他の仲間が一斉に攻撃を仕掛けてきた


全方向から降り注ぐ矢の雨。どうせ致死性の毒とか塗られてるんだろ


なんで声をかけたんだろうと思ったけど、注意をひくのが狙いか。いい手だね。



まだまだ甘いけど


炎走フレガ!!」


炎を纏った獣が壁を伝い宙を舞い地面を駆ける


「ぎゃあぁぁぁ!?!?」

「あ、あづいぃぃ!?!?」

「みず、みずを………」


走った道は焦げたような跡が残り、不運にも炎に触れた暗殺者は身体を焼かれ悶え苦しむ。無惨に炭と化してしまった者までいた。喋れてる奴なんてまだマシだろ


「ば、馬鹿なっ!?」


「後はお前だ」


「ぐごっ!?!!」


上から飛び降りてきたミロが最初に現れた暗殺者の頭を地面に押さえつける


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


「ストップストーップ!ミロやりすぎ」


「ここで辞めたら中途半端だ。しかもその方がよっぽど酷い目に——」


「とりあえずその炎を消そうな?」


「…分かった」


渋々身体を纏っていた炎を消してくれた。あらら、よく見ればこの暗殺者、頭が半分ほど焦げてしまってるじゃん


「ふぅー、危なかった。ノア、直してあげて」


「え?なんで?」


うん知ってる。ノアはそんな事しないよね


「あ、拷問のため?」


「……うん、そう」


まあ、それに近いことはするからハズレじゃないし、嘘とかついてないし


「とりあえず喋れたらいいから」


「うん。分かった」


ノアの身体から青紫色の光が漏れ出し、両手で焦げた頭を包み込む


物質再生オブジェクトリバース


さっきまで半死半生の状態だった頭は元の姿へと戻っていく。まるで時間が巻き戻ったかのように


「はぁ…はぁ…」


うん。息もできてるみたい


「よし、それじゃあ話しを聞こうか」


「殺すなら、殺せ。何を聞かれよう、とも、答える気は、ない!」


「うんうん。立派な覚悟だ」


「じゃあ殺そ」


「ノアー?話し聞くから待ってねー」


ほっといたらすぐにでも殺してしまいそう。


「でも俺、拷問とか尋問とか苦手なんだよね。こういうのはリースとかに任せたいのに…」


彼にかかればどんなに口の硬い奴でも面白いくらいに喋り出すからね。グロくて見てられないけど


「じゃあ雇い主だけ教えて。それだけでいいからさ」


「だから、答えないと———」


「ノア、あれやって」


「うぃ。悪夢再生ナイトメアリピート


もう一度ノアが彼の頭に手を置く


「はっ?あ、あ、ぎ、ギャァァァア!?!?お、おゆ、お許しくださいヨーク様!?!?私は、失敗したわけではございません!?!!」


悲鳴を上げてその場で苦しみ出す。これはノアの能力の一つ。今彼の頭の中では自分の想像する最悪の光景が映し出されている。やりすぎたら精神が壊れるから普段は絶対に使わせない


時々思うけどノアの能力って大抵のものがエグいよな


「ヨークって?」


「ユミリスを迎えに来てた貴族」


そうか、ミロはアイツの名前を知らなかったか


「あ、あ、あぁ…」


「あ、終わったね」


悪魔を見せられる続けた彼は廃人となりその場に膝立ちのまま動かなくなってしまった


よく見れば顔の穴という穴から液体が漏れ出ている。うん、エグい


「ミロ、後始末お願い」


「たく、雑用ばっかり押し付けやがって」


焦げ臭い臭いと共に彼の身体は灰となって朽ち果てる


「やっぱりあの男だったか」


話しを聞いた俺たちの始末かな。でも、あれは不可抗力だっただろ。はぁー、起きてしまったものは仕方ない。どうにかするとしよう


「やりにいく?」


「行かない。彼は使えそうだし、もうちょっとだけ頑張ってもらおう」



さてさて、これからどう動こうかな

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