第10話 現状把握


「ラージャが死んだ?!」


「はい」


帰ろうした俺たち三人は、なぜかユミリスに「褒美もまだでしょ?着いてきなさい」と無理矢理連れてこられた館まで連れてこられた。


ミロは用事があるって適当に逃げてったけど、それならノアも連れて行って欲しかった…


「なんでよ!!あの人がそんなに簡単にやられるわけないでしょ!?」


「ですが、事実です」


しかも青年貴族からとんでもない話しを聞いてしまった


ラージャって名前は俺でも聞いたことあるぞ。この国トップの魔導師で宮廷魔導士団の団長も務めていたちょっと凄い人だろ?


「私もそれを知ったのは今から四日ほど前のことです。この都市に到着してすぐの頃に早馬で知らせを聞きました。王家の印もありましたので疑いようのない事実かと…」


「そんな…」


意気消沈したようにユミリスがソファに座り込む。かなりショックみたい


そんな事より、さっきから周り騎士に囲まれてて落ち着かない。なんなら睨まれてるし。やっぱりこんなの俺が聞いていいものじゃないよな?



「心中お察しします。ラージャ殿は殿下の魔法の師でもありましたな」


「誰が……誰がラージャを殺したのよ!!私が仇を取ってやる!!」


「お、お鎮まりください!姫様一人でどうにかなる問題ではないのです!!」


そうかな?見た感じユミリスは結構強いと思うよ。それこそミロとかになら一対一で勝ってもおかしくない


「じゃあなによ、黙って見て見ぬフリをしてろって言うの!?」


「……陛下は、この件を公表するつもりはございません」


「はっ……?」


「今から数週間後にはラージャ様は『実験の失敗により居合わせた部下を含めて死亡』と世間に報じられるでしょう。死の真相は一部の者だけで共有されることとなります。どうか理解ください」


それだと、聞いちゃった俺たちはどうしろと?もしかしてこの後口封じに殺されたりとかされちゃう感じかな。めちゃくちゃありそう


「なによ、それ……父さんは何を恐れているのよ!ラージャは父さんの友人でもあったのよ!それを…」


「ラージャ様を殺したのは、あの『夜会』の構成員達です!!」




……はぁーーーー???



「え、嘘でしょ…」


「誰が動いたのかは分かりません。ですが、あの組織が直接動いた事は確かです」


いやいやいやいや。ないないない。だって、俺そのトップだよ?そんな命令した覚えもない


「その情報を最後に組織に潜入していたラージャ様の部下も始末されてしまいました」


絶対これ誰か勝手に動いたろ。スパイを始末するついでに黒幕もやっちゃおうぜみたいな軽いノリでやったろ!俺がいないところでまたやらかしたな!!


「………」


「今回は剣を収めてください。いくら我が国が大国と言われようとも、『夜会』を敵に回す行為はできません」


うん。そうして欲しい。なんなら今度王城まで謝罪に向かうから許してくれ


「…ヨーク、貴方は私の性格よく知ってるわよね?だったら、それで私が退くと思う?」


「姫様…」


「ラージャには、あの人には恩義がある。受けた恩を返せずして王家の名は名乗れない。私は一人でも成し遂げてみせる!」


…いややめて?


「はぁー、国王陛下の言う通りの展開になりましたな」


「父さんがなによ?」


「陛下も姫様が仇討ちに乗り出すだろうと予想されております。そして、陛下自身も今回の件には怒りを燃やしておられる」


マジか。やばいよ、また国一つ相手取らないといけない感じが出てきてるよ


「ですが、『夜会』に対抗する戦力は私たちにはありません」


「そんなの、私が———」


「もちろん姫さまを含めた国中の戦力をかき集めても、彼の『災厄』は滅ぼさないでしょう」


俺ってどんな化け物だよ。言っとくけど死ぬときは死ぬからな


「じゃあどうするのよ!!」


「陛下は既に策を巡らせて各国に働きかけておられます」


雲行きが怪しくなってきたぞ


「『夜会』打倒を掲げた連合軍を組み忌々しき奴らに終止符を打つのです!既に数国は賛同してくれております」


「父さんも本気なのね…」


「はい。そこで姫さまにも一つ任せたい事があると」


「私にできることならなんでもするわ!」


いやしないで。お願いだから大人しくしといて


「それがこの迷宮内部に存在する神聖石をどの勢力よりも早くに入手せよとのことです」


「神聖石?あの勇者を召喚するための?」


「はい」


「ふーん……分かったわ、私がその任を受けるわ!」


「ありがとございます。以前より私どもも準備をしてまいりましたゆえ、集めた冒険者や騎士も必要とあらばお使いください」


「苦労をかけるわね」



…………帰ろ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る