第9話 ある王女の出会い
「うーん……、石ってどこにあんの?」
「知らないのかよ!」
いや、そんなに怒んなくても…。たしかにこの迷宮にあるって聞いてきたけど詳しい階層とか知らないし
かれこれ潜って三時間かな?今何層なんだろ
「ねえミロ、ここ何階?」
「四十八階層だよ。それくらい数えとけ」
全階層六十三分の四十八?
それだけ探し回ってまだ見つからないと?
「おいノア、ソロモンに偽情報でも教えられたんじゃないか?」
「…さぁ?」
「おい!」
あの女ならやる。確実に。下手に偉人だけあって本に何を書いても信憑性を持たせる。
だからこそ愉快犯ばりに遊びで適当な事を書いた可能性もある。んでそれを読んで探し回ってる俺らを笑ってやがるんだ、きっと。
「これで全部探し回って見つからなかったら適当な相手に八つ当たりしてやる…」
「…なぁボス、冗談だよな?まだ国ならいいが龍やら神やらに手は出さないよな?」
いやいやミロもそんなにビビんなくても大丈夫だよ。あんなプロゲーマーにチート積んだような規格外とは二度とやり合いたくない
「ディー、またやるの?今度は私もやる」
「機会があればねー」
絶対にそんな機会なんぞ作ってやらんからな
「ん?」
「どうしたミロ」
「人がいる」
「え、めんど。どっかのパーティとか?」
「いや一人だ」
こんな深い場所に?言っちゃなんだけどここって冒険者が何十人単位でパーティを組んで装備整えて外泊しながらたどり着くところだぞ
ノアやミロだからこそここまで来れてるけど、(最初の数階層は裏技使って飛ばしたし)普通は一人でなんて来れない
「ほら」
ミロが指差す先には確かに人が倒れ込んでいる。こんな迷宮の中だから仲間に見捨てられたとかかな
近づいて観察すると金色のサラサラした髪の少女だった。顔つきも整ってる。でも、どっかで見た事ある気がする
「おーい、何やってんの?」
さすがにほっとくわけにもいかないので声だけかけておく。できれば起きないでくれ
ぐぅぅぅぅぅ
「「「はっ?」」」
地下一帯に広がるほどの大きな音。思わず声が出ちゃったよ
「お腹、すいた……」
うそだろ、コイツ…。まさか、腹が減って倒れてるだけ?こんな迷宮の深い場所で?見捨てられたとかじゃなくて?
「…ノアなんか持ってない?」
「…………ない」
「はいはい嘘はついちゃダメだよー」
「うわー」
少し持ち上げて上下に揺すってみれば隠し持ってたお菓子が出てきた。あると思ったんだよ
「ほーら、食べろー」
動物の餌やり感覚でお菓子を差し出す。普段こんな事滅多にしないけどコイツから面白そうな匂いがするから特別だ
「もしゃもしゃ」
「咀嚼音を口で言う奴初めて見たよ」
「ごくん!ふぅ〜。おいしかった。あれ?貴方達はだれ?」
「お前が美味しそうに食べてしまったお菓子の持ち主だよ」
「あれ、私の…」
許してくれノア。今度また美味しいやつ買って持ってくから
「そうなの。私はユミリス・リデリアこの国の王女よ。助けてくれた事には感謝するわ」
ああー、見たことあると思ったら王女だっのか。でも、今さらそんな偉そうな態度とっても俺の中では食いしん坊のイメージで固定されたけどな
「それで、王女がなんで一人でこんな場所に?」
「決まってるじゃない」
まさか、コイツも石を?
「武者修行よ。強くなるためにはこうでもしないとね」
あ、馬鹿の方だったのか。
でも、こんな場所まで一人できたのか。本当に強いんだろう。運やある程度の実力じゃ来れる場所じゃないからな
「ちょうどいいわ。貴方達、私を出口まで案内しなさい」
「え?なんでさ」
「言わなきゃ分からないの?」
逆に分かると思ってんの?早く話しを進めてくれないとノアは眠たそうに目を擦り出してるしミロもイライラしだしてるから!
「迷子とか?」
「迷子?この私が?」
「違うのか…」
「道が私を出口から遠ざけてるだけよ」
「迷子じゃねえか」
ダメだ。コイツと喋ってるのめんどくさくなってきた
「分かったら私を案内しなさい!」
「はいはい…」
とりあえず今日はこの辺で引き返そうか。まだ期間はあるしゆっくり行こう
あまり遅いとノアが「飽きた」とか急に言ってすぐに帰るからちょっとは急がないと
「そういえば貴方達名前は?」
「俺はジーク。こっちはミロとノア」
「そう、よろしくねジーク、ミロ、ノア」
もちろん偽名です。この二人は名前なんて名乗らないから知られてるはずがないけど俺はもしかしたら、と言う可能性を考慮して偽名です
「ちゃんと案内しなさいよ?」
「分かってるよ」
めんどくさい拾い物をしてしまった…
———
「んー!!やっぱり太陽は気持ちいいわね!」
あーそうですか。俺たちはここまで来る間もあんたの我儘に付き合わされて大変疲労が溜まってますがね
「助かったわジーク。何か褒美を与えないとね」
「いや、要らないから」
「そう言うわけにもいかないでしょ?うーん、何がいいかしら…」
こういうところはしっかりしてるんだな。
「姫様!!!」
「げっ、ヨーク…」
歌詞に囲まれた青年がこっちに近寄ってくる。確実にユミリスって分かって声をかけてきたから貴族かな
「なぜこんな場所におられるのですか!」
「私が何をしても勝手でしょ?」
一国の姫様がそれはどうなのよ?
「それよりも、少しお耳に入れたいことが…」
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