第7話 迷宮都市
迷宮とははっきり言えば謎の一言に尽きる。世界各地に存在するが構造は違う、中の魔物は違う、場所にも統一性がない
作られた時代が違う。用途が違う。そんなレベルの議論は既に行われない。それほどまでに謎の存在なのだ
分かっていることは、魔物が湧くと言うこと、神秘が眠っているということ、
そして富をもたらしてくれると言うこと
———
さてさて、やって来ました迷宮都市!!
街中に溢れかえる露店の数々、鉄と血と汗の混ざったワクワクするような臭い、武器をかかげ我こそはと迷宮へ挑む冒険者たち
「これこそが異世界!」
「…なに言ってんの?」
いやそんなに素で返されたらめっちゃ恥ずかしいから。ちょっとテンション上がっただけだから
「…あれ?ノア、いつの間にそんなの買ってたんだ?」
見ればノアの手には少し大きめのアイスが握られている
「さっき」
「お金は?」
「?ディーの財布だけど」
ディーとは俺の事だ。初めて会った時にちゃんと「ハディス」って名乗ったはずなんだけど、ノアの中では「ディー」で固定されてしまった
「………本当に財布無くなってる」
コイツ、いつの間に盗んだんだ?というか買ってやるとは言ったけど人の財布で勝手に買う奴がいるか!
「…まあいいや。それより行くぞノア」
ペロペロと幸せそうな顔でアイスを食べてるノアを見たら怒れもしないよ。
こうして見ると最初に出会った頃はもっとトゲトゲしてたけど、今はかなり丸くなったな
「行くってどこへ?」
「迷宮」
「えー…」
「なんで嫌そうなの?お前何しに来たんだよ」
「………………………アイス食べに」
「残念だがそれは目的じゃなくてお前を連れてくるための手段だ」
ガーンと擬音語が見えそうなくらい口を開けてびっくりしてる。なんで?本気でアイスだけ食べに来たと思ってたのかよ
あれ?もしかして今回ってノアじゃなくて他の奴の方が適任だったかな?
…いいや。ウチはみんな優秀だから誰を連れてきても結果を出してくれるだろ!
「じゃ、行くぞ」
「うぇーん」
泣き真似をしてまで帰ろうとするノアを無理やり抱き上げて連れて行く
くそっ!やっぱ他のにしとけばよかった!!
「おい!どう言う了見だよ!!」
「はぁー?そっちが先にやってきたんでしょ?」
今度はなんだ?人だかりまで作ってなんの騒ぎを起こしてるのやら。迷宮都市らしく喧嘩でもしてるのかな——
ん?んん??あれは………。ちょうどいいのを見つけてしまったな
「ノア、ちょっと予定変更。あの騒ぎがなにか見に行こう」
「えぇー、それはもっとめんどくさい」
「いいからいいから」
「うー」
ノアを引きずって無理矢理連れて行く。だってこうでもしないと来てくれないし一人になんて恐ろしくてできない
「ちょーっと通してくださいね」
人だかりを抜けて最前列に抜け出る。
争いの種になっているのはどうやら二人の人物らしい
片方は後ろに数人の冒険者を引き連れた金髪の青年。けど、叫んでるのは取り巻きの一人だな
もう片方は黒髪の少女。ショートパンツにタンクトップとかなりラフな格好の少女だった
「おい、あの女の子大丈夫か?」
「さぁな。この都市でも一、二を争う『金剛』のレイマンに喧嘩売ったんだ」
「ああ。タダじゃ済まされないだろうさ」
なんでこんな所にいるのかは知らないけど、見つけたからには手伝ってもらおう。このトラブルを片付けて貰った後にな!
「はんっ。そいつが許可なく身体に触れようとしたんだ。私は反撃しただけ、文句を言われる筋合いはない」
「なんだとっ!?」
これは長引きそうだな。終わった頃にもう一回来ようかな?
「さがれドーブ」
「レイマンさん…、でも!!」
「彼女の言うことが最もだ。君、ウチのメンバーが失礼をしたね」
リーダーっぽい金髪イケメンが出てきた。レイマンとか言ったっけ?早くこの言い争いを終わらせてくれ給え
「それで、謝罪も兼ねてこれから一緒にランチでもどうだい?もちろん僕の奢りさ」
うーん。あんなキャラがウインクとかすれば様になるな。周りの女性もキラキラした目で見つめてるし。ノアは全然興味無さそうだけど
「あ?」
少女の視線が一層厳しくなる。おっと、これはまずいな
「ノア」
「うん。
ノアが手を向ける先は争いの中心にいる女性。
瞬き一つしていないにも関わらず彼女の姿がその場から消え去る
「?!?!」
レイモンだかレモンだか知らない金髪イケメンも驚いて辺りを見回しているけど、既にそんな近くにいるはずがない
「ありがとノア。俺らも同じ場所に飛ばしてくれ」
「はーい」
ノアの手を握れば浮遊間が身体を襲い、目の前の景色が移り変わる
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