第3話 何者だ!

キャンピングカーの助手席で、運転している彼女をチラッと見た。

肩まで伸びた金髪は上が黒くなっていてプリンみたいだ。横から見ると巨大な胸だ、おそらくF……いやG……分からないがとりあえずデカイ。

よく見ると少し垂れ目だがパッチリとした目でまつ毛も長い、幼さが残る可愛い顔をしているが全く好みじゃない。


「ねえ、初めはどこへ行く予定だったの?」


「まあわらびあたりを考えてたんだけどな」


「そうなんだ……私寒河江凛さがえりん、よろしくね」


「オレ桐生匠真きりゅうたくまだけど」


「タクちゃんでいい?私リンでいいよ」


ヤジさんキタさんじゃなくてタクちゃんリンちゃんか……心の中で失笑する。

しかしコイツはいったい何者だ?、何の仕事をしてるんだ?落ち着いて考えると一度出直して来たほうが良かったんじゃ無いのか?俺の心へ不安がジワッと広がっていく。


「ねえ、お風呂はスーパー銭湯でいい?」


「ええ、別にいいけど」


リンはナビを操作してスーパー銭湯を見つけると、そこへ向かって車を走らせた。

色んなことに時間を取られ夕方になってしまったので、食事も済ませることになる。

初めてスーパー銭湯へ入った。とても広いし綺麗だ。マッサージ器具やゲームもある。俺はキョロキョロと館内を見ながら、飲食コーナーへとたどり着いた。


「私、親子丼!」メニューを見たまま、こっちを見ないで言った。


「オレも同じでいいや」


「ついでに唐揚げも頼んでいい?」

クリっと上目遣いで見ると微笑んだ。


「いいけど……」なんか嫌な予感がする。


「今日は色々あったし、お昼を食べ損ねちゃったからお腹すいた」


料理が運ばれてくると嬉しそうに食べている。


「よく食うな」見てるとこっちが胃もたれしそうだ。


「美味しいよ、ここは前に来たことがあるような気がする」


「ふーん……」


とりあえずお風呂は広くて気持ちよかった。スーパー銭湯をそれなりに楽しんでキャンピングカーへと戻ってくる。


「ねえ、今夜はここで泊まっていい?」


「ええ?」


「ここは朝まで車を止めていても怒られないの」


「でもどうやって寝るんだよ」俺は車内をグルッと見渡す。


「大丈夫、このテーブルとソファーがベッドになるの」


「へーそうなんだ、まあいいけど、キャンピングカーなんて初めてだしな」


「じゃあお酒とツマミを買ってくる」


「なんだそれ?」


「だって運転しないんだったらお酒を飲めるもん」


「…………」


近くのコンビニまで行ってお酒やツマミなどを買ってくると、何となく飲み会が始まる。


「お前、仕事は?」


「私ユーチューバーなの」

プシュっと濃いめのハイボールを開けた。


「えっ!ユーチューバー」話には聞いた事があるけど実際に会ったのは初めてだ。


「これを見て」

リンはノートパソコンを開いて見せてくれた。


温泉やグルメ、キャンプ場、景色の良いところなどへ行き、撮影してアップしているようだ。よく見ると50万回ほど再生されていた、内容によっては100万回以上再生されているものもあるようだ。


「へえー、これでお金になるんだ?」


「私これでもそこそこ人気があるんだよ」ちょっと偉そうに腰に手を置いて胸を張った。胸の大きさにまだ慣れてない俺は、少し視線を逸らす。


「ふーん、そうなんだ」ユーチューバーなんてどれくらい収入があるのか検討もつかない。


「キャンピングカーって幾らぐらいするんだ?」


「この車は900万円くらいだよ、もっと豪華なのもあるけど高くて買えないし」


「ええ、そんなにすんの、ユーチューバーって儲かる仕事なのか?」


「この車を買った後にユーチューバーになったからね」


「そうなんだ」

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