第4話 勝手だろう!
「ねえ、タクちゃんはどうして自転車旅行をしようと思ったの?」
「まあ色々とあって……父親からも世の中を見てまわったらと勧められてね」
「そうなんだ、タクちゃんっておぼっちゃまなの?」
「なんでだよ?」
「だって世間の親は普通、真面目に働けって言うよ。仕事もしないで世の中を見てまわるとか一般の人は出来ないんじゃないかなあ?」
痛いところをついてきたなあ…………
「おぼっちゃまじゃねえよ!ただ父親も大学の頃日本一周したから、我が家の伝統みたいなものさ」
「じゃあタクちゃんも大学生なの?」
「辞めたばっかりだよ」
「辞めちゃったの?」
「いいだろう!べつに、俺の勝手だし、て言うか、なんで細かく説明しなくちゃあいけないんだよ他人のお前に」
「ゴメンね、一緒に暮らすからどんな人かと思って」
少し寂しそうな顔をした。
「一緒に暮らす???なんだそれ???」
「京都まで何日くらいで行く予定だったの?」
「まあ2ヶ月くらいかなあ、宿場が70くらいあるし…」
「じゃあ2ヶ月くらい一緒に暮らすことになるのね…」
少しだけ微笑んでいる。
「えっ!意味わかんない、大阪まで1日有ればいけるよね?」
「そしたら宿場巡りはどうなるの?」
「それは自転車が修理できたら考えるよ」
「私はもう一緒に宿場を巡ろうと思ってたのに、それをユーチューブにアップしょうと思ってたのに!」口を尖らせた。
「なんだそれ、人の計画に乗っかって自分の仕事をしようってか?」
「うん、とってもいいアイデアでしょう?」
ニッコリした。
「厚かましいなお前」大丈夫かコイツ…………。
「だって運命的な出会いだったかもしれないじゃん、二人は」
「そんな運命ならいらない、直ぐにリセットする」
「なんでそんなこと言うの、せっかくの出会いなのに」
「いいからもう大阪に向かって走ってくれ」
「無理よ、もうお酒飲んじゃったもん」
「なんだよ……」
夜も更けてきたので、テーブルをひっくり返してクッションをその上に乗せるとしっかりとしたベッドになった。セミダブルくらいの広さがあるように思えた。
「車内は寒くないし、上にかけるのはタオルケットでいい?」
「なんでもいいよ」
なんか訳の分かんない一日だったなあ………そう思いながらキャンピングカーの天井を見た、換気扇らしきものが付いている。
ふーん、こんな暮らしもあるのかと不思議な気持ちになった。
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