第2話 ウソだろう!

スポーツドリンクを買って出てくると、大きな白いワゴン車がバックで入ってきた。


「あっ!そこは……」


『バリバリ』バックしてきたワゴン車が鈍い音を立てて自転車にぶつかった。

自転車は車とフェンスに挟まれている。


「…………………」


「うわっ!やっちゃった〜!」金髪の女の子が、梅干しを舐めたような顔をして降りてくる。


出発して約32分、俺の自転車は事故に遭い走れなくなってしまう。


「マジかよ……」


「ゴメンなさい、あなたの自転車なの?」

車の後ろを覗き込んで自転車を見ている。


「ああ、そうだけど………」


「ゴメンね、ちゃんと修理代は支払うからさ」

そういうと彼女はどこかへ電話をかけた。


自転車をよく見ると、後ろのタイヤが歪んでいる、しかしそれ以外は大丈夫そうだ。ふと周りを見ると、コンビニにへ来ていたお客たちがこっちを見てクスクスと笑っている。数名の女子高生達は、金髪にダメージショートパンツでヨレヨレTシャツの彼女を見て笑っているようだ。

おじさん達は彼女の大きな胸を見てニタニタしている。Tシャツから透けて見えるブラに目がいってる。


「みんなジロジロ見てるんだけど……」


「あっそうか、じゃあ車の中に入って」


『ピッピッ……』サイドのドアが自動で開き、中へ案内された。仕方なく中へ入ると、なんとキャンピングカーだ。テーブルとソファーがある。ファミレスのボックス席のようだ。窓は可愛いカーテンで外は見えない。

いろんな飾りと小物で、中は女の子の部屋という感じだ。

彼女はずっとスマホで話してたが、やっとスマホを置いた。


「あの自転車すっごく高いのね、後ろのタイヤだけでも10万円以上するみたい、しかも取り寄せるのに10日はかかるって……でも大阪に行けば展示品が有るって」


「ええ、マジかよ」


そう言えば旅の途中でお金に困ったら、自転車を売れば帰る旅費は出ると父親が言っていた。俺は両手で頭を抱え込んだ。


「さっき両親に見送られて出発したばかりだぞ、それで直ぐに事故で帰ってくるなんてカッコ悪すぎだろう!」


「そうなんだ……本当にゴメンなさい」

申し訳なさそうにしている。


「どうしようかなあ……」


「これからどんな予定だったの?」

彼女は不安そうに俺の顔を覗き込んだ。


「ええ…とりあえず中山道を少しづつ進んで京都まで行こうかなって思ってたけど……」


「中山道?」


「知らないのかよ」


「…………」

長いまつ毛で瞬きの音が聞こえそうだ。


「江戸時代からあった道で、ずっと宿場が有るんだよ」


「そうなんだ……」


「宿場ごとに絵があるんだよ、有名な英泉とか広重とかが書いたやつ」


「そうなんだ……」

子供のように目を何度もパチクリした。


「ねえねえ、じゃあさ、その中山道を一緒に行こうよ、そうしたら大阪に着いて自転車修理できるし」


「はあ、何言ってんの?」


「だからさあ、このキャンピンングカーで一緒に大阪まで旅しようよ、えっと………」


「中山道」


「それそれ、そこを一緒に行こうよ」


「ふう……………」ため息が漏れた。


 事故証明を取るために、警察や保険会社の人たちが来て写真を撮ったりして帰った。早くコンビニを出たかったので、自転車を後ろに乗せると車は出発する。

とりあえず大阪まで行って、自転車を修理したらそれから後のことを考える事にしよう。まあ、ヒッチハイクで大阪まで行ったと思えばいいか……そう考えることにした。

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