第44話 自宅訪問

 ということで、三人は俺の家にやって来たわけだが……。


『ふへへへ、これが小倉くんの布団、布団〜///』と石川さんは俺のベッドに潜り興奮しているわけだ。


 うわっ──っと引きたいところだが、石川さんは美少女のわけだし、よし、そのままいていいぞ!!


 なので、『勝手に人のベッドに潜るな』だとかそんな突っ込みはしないでおこう。


 今日は幸いにもまだ両親は帰って来ていないわけだ。

 といっても両親とも帰りは遅いため当たり前のことだ。


 こんな現場見られたら何か変に誤解されそうだ。


『ぐぬぬぬ──っ、雄也の布団に潜って……』


 ふと、神崎の声が聞こえる。


 ぷんかぷんかとしながら神崎は石川さんが潜っているベッドに近づく。


 おい、その感じ……大体わかるぞ神崎……お前がしようとしていることが!!


 次の瞬間、神崎は石川さんから毛布を奪う。


「こ、これは雄也のだからね!! あんたのじゃない、だ、だから、そんなにしちゃダメなんだからね!! べ、別に匂いがつくとかそういうのじゃないし……ましてや、雄也のことが好きだとかそういうのはないんだからね!!」と真っ赤に顔を染めて言う神崎。


「そう、ならいいじゃない。あたしは小倉くんが好きなの、だからこうやってアプローチを……だから、布団を返してちょうだい!!」

「な──っ」


 ぐぬぬぬと俺の布団を引っ張り合う二人。


 変態かもしれないがこれだけは言いたい。


 "いいぞ、もっとやれ!! そのまま俺の布団に二人の匂いをつけてくれ!!"と──。


『こ、こいつ……なかなかやるわね。でも、雄也は私のものなんだ……きゃあああ──っ、べ、別に好きだからとかじゃ……ないから、ただこんな痴女に雄也は……似合わないだけなんだから!!』

『この、全てにおいてあたしより負けてる分際でなかなかやるじゃない……ち、二人がいなかったら……今頃、小倉くんと一つに///。ああああ、考えるだけでむしゃくしゃする!!』


 おい、石川さん、それまじすか!?

 ガチで保健室の時の続きを──。


 くそ、少ししたいという欲求が憎い!!

 で、でも……別に好きでもないけどこんな美少女と──ば、馬鹿野郎!!


 もし、拓哉と神崎がいなかったらと考えると本当に二人に感謝なのかもしれない。


 その様子に拓哉は目を輝かして言う。


「なあ、これが……少女漫画である女同士の争いってやつか?」


 ……お前が普通の男じゃなくてよかったよ……普通そこは『お前、最後に言い残す言葉は?』だとかそんな感じでボコすシーンだからよ。


 俺は泣きながら、「お前は俺の親友だぜ」とグッジョブする。


「え、なんか素直に喜べないんだが。そんなことより、この時間はいつもギャルゲーしてるんだが、何かギャルゲーないか?」

「んなもんねーよ。お前にとってギャルゲーは三時のおやつ的なのか?」


 すると、拓哉は俺にブルブルと震えている両手を見せ。


「これが全てだ」

「お前、ギャルゲー中毒じゃんそれ……完全に」


 どうやら、拓哉はギャルゲーを決まった時間にやらないと両手が震えるようだ。

 この中学の頃からの親友である俺がまだまだ、拓哉のことを知っていないという事実に少しショックなのだが。

 こいつのことは全て知っているつもりだったのにな。


「まあ、この程度で済んでよかった」

「なんだそりゃ?」

「ひどい時は身体中が痙攣するからよ」


 なかなかの中毒だなおい!! 

 身体中が痙攣とか怖えよ。


「それ大丈夫なのか?」

「ああ、そういう時は枕をその時のギャルゲーの落とすヒロインのおっぱいだと思って揉めば──」

「それ以上は言うな。やめろ、マジでやめろ」

「そ、そうかよ。なあ、それよりよ、もしこれがギャルゲーだとしたらお前は俺を選んでくれるか?」


 なっ──こいつ──。

 

 俺は拓哉を渋い顔で見て。


「──多分、一生好感度上げねえわ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美少女で残念なヒロインたちの心の声が聞こえるようになった件 さい @Sai31

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ