第40話 運動部にとって梅雨は最高
空の色は完全に雲により真っ黒に染まっている。
ザァーっと強く降る雨。
教室に入ってくる人たちはみんなびしょびしょだ。
「最悪なんだけど……」
「私、車〜!!」
「ずるい〜!!」
「しゃあああ!! 雨で部活中止!!」
「まじで、雨様だよな〜」
そう、梅雨に入ったようだ。
○
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り、帰りの会が終わると。
「雄也〜!!」と俺に拓哉が飛びつく。
教室はじめじめしていて気持ち悪いので早く家に帰りたいのだが。
「なんだよ、いきなり」
「雨つえ〜よ〜」
『拓哉くん……殺す……殺される覚悟はあるよね?』
ふと、神崎の心の声がする。
その心の声が聞こえた瞬間、俺は拓哉の両肩を持ち押した。
「──っ!? いきなりなんだよ!!」
俺は真顔で。
「おい、なんでかわからんが、お前、神崎に殺されるぞ?」
「いや、まじでなんでだよ!?」
……俺にもわからない。
そればかりは勘弁してくれ。
いや、マジでなんでだよ!!
え、今、拓哉が神崎の気に触るようなことしたか!?
「んー、多分あれだ、生理だな!!」
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!
失礼いや、とんでもなく失礼なことを言っているのが自覚しているからこそ心の底からそう謝った。
「まじかよ、神崎みたいな美少女にも生理ってあんのかよ!?」
「おい、なんだよその『アイドルはトイレに行かない』みたいな反応!!」
やれやれ……俺の周りにロクなやつがいねーや。
「んで、話の続きをしてくれ」
「あああ、そうだったな!! そういえば、そんな感じだったな」
「おい、俺は帰っていいか?」
「嘘です嘘です。話があってだな……」
突如、真剣な顔で俺を見つめる拓哉。
おっ!! なんだなんだ、そんなに真面目な話なのか? などとそんなことは期待していない。
どうせくだらないことだろ?
もうわかってんだよ、今頃何言われても驚かないんだからね──ッ!!
「俺さ、少女漫画の主人公になりたい!!」
はい──ッ!! 予想の数十倍上きちゃああああ!!
俺はポカンとした顔で。
「え? ラブコメじゃなくて?」
……いいや、多分聞き間違えだろ?
え、少女漫画の主人公になりたい人なんているの?
てか、主人公って女だよな?
「ああ、少女漫画だ!!」
「いやいやいや、とっくに四月一日は過ぎてるぜ? 今頃エープリルフールとか、そもそもエープリルフールはあれだよな? エープリルさんが亡くなった日だよな!!」
「おい、それは遠回しに嘘って言ってるよな?」
いや、嘘であって欲しいんだが……え?
何その真剣な顔はよ!!
え、ガチなの!?
ねぇ、ガチなの!?
「いや、ごめん……俺が間違ってたわ」
長年一緒にいるのだ。
こいつがこんな顔するってことはガチで間違いない。
なら……。
俺は大声で。
「ええええええええええええええ──ッ!?」と驚く。
こんなの当然の反応だろ、普通、少女漫画の主人公をやりたいなんていうか?
言わないだろ?
周りは俺の方を見ているが関係ない。
今はそんなことよりだ。
「お前……さては、拓哉の格好をした偽物だろ? いいや、偽物だな?」
「なんでだよ!!」
「俺の知ってる拓哉は女の子になりたいなんて言わねーぞ、言うならあれだ……ヒロインのペットになりたいだ!!」
たしか、中二の頃にそんなことを七夕の短冊にお願いしていたはずだ。
あの時はまじでドン引きした気がある。
「それは黒歴史だ!! さすがにペットは今思うと変態だった」
どうやら、わかっているらしい。
大丈夫、少女漫画の主人公になりたいも負けてないぞ!!
「たしかあれだったよな、ヒロインのパンツ覗けるからだったよな!!」
「おい、マジでやめろ!!」
ほんと、ちっちゃい夢だよな……ヒロインのパンツ……ヒロインのパンツ……石川さん!?
あれ……俺、石川さんのパンツ見たことあるんだが……あれ、桃愛のも……。
「なあ、拓哉?」
「なんだよ、雄也?」
すると、俺は真剣な顔をして。
「俺はヒロインのペットかもしれん」
「何言ってんだ、てめぇ?」
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