第38話 22話ぶりですね石川さん!

「ちょっと小倉くん……いいですか?」


 ふと、昼休みになると教室の入り口からひょこっと顔を出してこちらを見る石川さん──。


 やれやれ……なんなんだよ。

 あまり教室の前で話しかけないでほしい。


 なんせ、石川さんはこの学校だとかなりの有名人なのだ。

 そう簡単に話しかけられると、周りから俺への印象が……。


 現に少し睨まれている気がするのだが……。


 ああ、全くめんどくさいなぁ。


『ぐぬぬぬっ──、あいつこの教室に!!』


 やれやれ、早く石川さんのところへ行き、場所を変えるとしよう。


「お前、昼は?」

「すまん、今日は少し用事がある」


 そう言うと、俺は弁当を手に持ち急いで、教室を出る。


 そして、俺は手で、ついてこい、と仕草をして石川さんと場所を変えた──。


『ももも、もしかして人気が少ないところに移動してあああ、あたしとしてくれるの///』


 んなはずあるか!!

 人気が少ないところには移動するけども!! それは、今後めんどくさくならないようにするためだから!!


 しっかし、久しぶりだ、石川さんと話すのは。

 たしか、デート以来だな……。


 LINEでは毎日のように話しているが、こういう直接は久しぶりだ。

 そのためか、少しだけドキドキする。


「よし、こんなところだな……」


 俺はあまり人気のない隣の西棟の空き教室へとやってきた。


『ままま、まさか!! ほんとにするの!? でも……大丈夫ですよ!! あたし、今日は上下揃えてますしいい下着なので!!』


 自信満々なのがトーンからわかる。

 少し見てきたい気もするが、我慢だ!!


「それで、話とは?」

「えっーとですね……」


 少し、考えている石川さん。


 ……そんなに言えないことなのか?

 ま、まさか、ほんとにエッチなことをしようとなのか!?

 いいや、そんなことあるはずがないだろ。

 もうわかってんだよ。

 どうせ、『声を聞きたかった』とかそんなところだろ?


『あたしを二十二話放置して、別の新キャラヒロイン二人とイチャイチャして、それだけではなくあの邪魔者ともイチャイチャしてたからに決まってるじゃないですか』


「うわ……」


 つい、俺は声を出してドン引きする──。


 やべ……。


 チラリと石川さんを見ると、少し戸惑っているのが見て取れる。


 つーか、禁句だろそれはよ!!

 たしかに、新キャラとイベントもあったし、神崎とも下校イベントがありましたけど!!

 別にイチャイチャはしてません!!


 すると、石川さんはニコりと笑顔で──。


「──そうですね!! あたしは小倉くんのことが好きですし、声が聞きたかったからです!!」

 

 やめろ、その反則級の笑顔!! 

 心の声が聞こえなかったらその笑顔で俺、死ねる自信がある!!


『どうせ……他の女の子としたんですよね……』


 いや、なんでそうなんだよ!!

 そもそも、何、俺はすぐに喰らう男に見られてるの?


「そ、そうか……そりゃ、どーも」と俺は頬を人差し指で軽くかきながら言う。


 それでも、少し嬉しい!!

 嘘だと分かっていても、なんせ、可愛いんだもん。


『どうせ、あたしはメインヒロインじゃないんですもんね……どっからどうみても、メインヒロインみたいな流れでしたじゃん……』


 それ以上はやめろ!!

 そもそもだ。

 俺は誰一人としてメインヒロインだとかそんな目で見ていない!!

 でも、もし【テレパシー】が使えなかったら、石川さんをメインヒロインとして……いいや、異性として好きになっていたのかもしれない。


「はい!! ですので、あたしに『好き』と言ってください!!」


『いいや、これはもしかして、そういうプレイなの!? その余裕の表情……「さぁ、早くしないと他の女を喰うぞ?」という感じ!! こ、この〜小悪魔め〜///』


 ああああ──ッ!!

 やめろ、そんなこと一切思ってねーよ!!

 しかし、めんどくさいなぁ……。


 その一言で終わりなら──。


「好き──」


『ほ、本気のす、好き///』


 ちげーよ、なんでそうなんだよ!!

 いや……そっちの方が楽な気がするぞ……。


 俺は笑顔で──。


「……好き」


『きゃああああああああ──っ!! あ、あざす!! 録音したし、今日のおかずにします///』


 や、やめろ──ッ!!

 つーか、何この甘々な感じ!!


 













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る