第37話 残念イケメン拓哉くん!2

「お、おう……頑張れよ」

  

 そう若干引き気味に言う雄也。


「それでだが、誰をメインヒロインにするべきだと思う?」


 実際、どの女子も二次元には勝てないのだが。

 そのため、どの女子を見てもこれといってときめくものはない。


「そんなの知るかよ……強いて言うなら、普段からお前と一緒にいるやつじゃね?」


 い、一緒にいるやつか……そんなの一人しかいねーじゃねえかよ。


 俺は真顔で雄也を指差す。


「はぁ? え、俺ってこと?」


 うんうん、と頷くと俺は腕を組んで。


「当たり前だろ、俺が普段から一緒にいるやつなんてお前ぐらいしかいない。なんだ、そういうことだったのか……」


 なんとなくわかったぞ。

 こいつ、もしかして俺のこと好きだな?

 それを遠回しに伝えたかったんだろ?

 ふん、このツンデレが!!


「もしかして、お前、俺のこと──好きだな?」

「はぁ? そんなことあるかよ。気持ち悪い!!」


 やっぱり、そういうことなのか。

 それなら、『好き』ってしっかり言えばいいのに。

 しっかり、振ってやるからよ!!


「ごめんよ、雄也。俺は親友ルートは流石に無理なんだ」


 そう言いながら、雄也の肩にポンと手を置いた。


「え、なになに、なんで俺が振られてるみたいになってるの!? え、え!?」


 ほんと、こいつ素直じゃねぇな……わかるよ、だって俺イケメンだし、俺優しいしさ!!

 でも、現実をみてくれ。

 そもそも、日本では同性の結婚は認められてないんだぞ?


「もし、俺とお前がギャルゲーの世界にでも生まれてれば、そのルートもありだったかもな……たしかにお前は優しいし、優しいし、優しい!!」


 ……あれ?

 ほかになんかあったっけ?

 え? 優しい以外に何かあったっけ?


「おい、それ、優しいだけしか言ってねーよ!! 何度も連呼するな!! 余計傷つくだろうが!!」


 そこで、俺はふと考える。


「待て……もしかしたら、他にも何かあるはずだ」


 う〜ん、雄也の良いところか……。


 案外にもそう考えてみると見つからないものだ。 

 いつも隣にいるのに……いいや、気づけばこいつの隣に俺がいたのか。

 

「そうか、そういうことか……」

「?」


 何言ってんだ? と不思議そうに俺を見ている雄也。

 

 なんとなく、雄也のいいところがわかってきた気がする。

 

 俺はニヤりと笑い。


「ん、お前はやっぱりすげーよ。ほら、人を引きつけるっつーか、気づけば俺はお前の隣にいる。そのくらいお前はすごいやつだ。多分、それは……優しいからなんだな」

「結局、優しいかよ」


 いいや、ただの優しいなんかじゃない。

 雄也の持っている優しいは、普通の人が持っている優しいとはどこかが違うのだ。

 でも……そんなことは雄也には言えない。

 恥ずかしいから……親友にそんなこと言えるかよ、ばかやろー。


「そうだよ、ははは、悪いか?」


 すると、雄也は顔を赤く染めて。


「悪くねーよ、むしろ……その……ありがとな? なんっつーか、俺のいいところをそんなに深く考えてそれを、俺に言ってくれてよ!!」


 ふん、何を今更……そんなの親友なのだ。

 当たり前に決まっているだろ?

 今更感謝なんていらねーよ。


「そうかよ、はは、照れるじゃねーかよ!!」


 あれ……この感じってもしかしてさ?


「はぁ!? 俺の方が恥ずいわ!!」

「いいや、俺の方だよ!!」


 やっぱりそうだよ。

 そういうことかよ。


「なぁ、雄也?」

「んだよ? まだめんどくさいこと言うきなのか、コノヤロー?」

「め、めんどくさいとは失礼な──ッ!! ただな? もしかしたら、俺のメインヒロインはお前なのか──」


 まだ、最後までいっていないのに、雄也は即答で。


「は? な、はずねーだろ、よーく考えてみろ!!」

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