第36話 残念イケメン拓哉くん!1

「おはよ雄也」

「よう、おはよう!!」


 そう言いながら俺は席に着いた。


 まだ、朝の会までは少し時間があるな。

 比較的、俺と雄也は学校に来る時間が早い。

 そのせいで、まだ教室にはそこまでの人がいな

い。

 元々は、雄也と一緒に登校していたが最近は一緒ではない。

 ほら、人を待つのってめんどくさいだろ?


 そして、俺は、ふぁ〜、と大きなあくびをする。


 昨日はギャルゲー『ラブキス』のルリカルートを攻略するために徹夜してしまった……。


 これだからモテる男は辛いぜ!!


「なぁ、雄也?」

「ん? どうしたよ?」


 俺は雄也の机を叩き──。


「やっぱりおかしくね? なんで俺が現実世界でハーレムできねーんだよ!! 二次元だとあんなにハーレムできんのによ!!」


 おかしい……全てにおいておかしい。

 何故、こんなイケメンなのにモテないんだ!!


「うっせーな、そりゃー現実世界と二次元はちげーからな。てか、お前はモテてるくせにそんなこと言ってんじゃねえ!!」


 その言葉に俺は雄也の顔を右手で握る。


 そのまま雄也を睨みつけ。


「なに冗談言ってんだよ? この俺がモテてる? そんなこと本気で言ってんのか?」


 と、その時だった──。


「拓哉くーん!!」と数人の女子グループが俺のところにやってきた。


 俺は雄也から手を離して、女子グループの方を振り向く。

 

 そのまま、髪を払い。


 えっと……こういう時はイケメンを演じるために……。


「どうしたんだい、子猫ちゃんたちよ。なんだ? 俺と遊びたいのかい? おいおい……それって、そういうことだがいいのかい?」


 よし!! 噛まずに言えたぜ、どうだお前ら……俺はどのルートでも攻略してやるぜ!!


 は、はは……と苦笑いをする女子グループ。


 そして、一人の女子が「あ、ありがとね。みんな行こ!!」と気まずそうに言うと、女子グループは背を向けて帰っていった──。


「ま、待ってくれ〜」と手を伸ばすが時は遅かった──。


 そのまま、俺は雄也の机に両手を置いて顔を伏せて。


「くそおおおお、なんでだよおおお!! なんで、なんで俺を好きになんねーんだよ!!」


 そんな俺に雄也は手をそっと置いて。


「お前……せっかくモテてんのに残念なやろうだな……なぁ、拓哉?」

「なんだよぉ……」


 俺は雄也の方を振り向く。


 すると、雄也は清々しい顔をしながら。


「お前、早く二次元だけ見て生きた方がいいわ。そっちの方がお前は輝ける!!」


 こ、こいつ……たしかに二次元なら百発百中女を落とすことができるけど!!


「ば、ばかにしやがって!!」と俺は雄也に飛びつく。

「ちょ、やめ、やめ……やめろおおおお!!」



 はぁはぁ……、と俺たちは息を荒くしながら椅子に座る。


 ちなみに、俺はまだ雄也の隣に人がいないためそこの席を借りている。


「なぁ、雄也?」

「なんだよ、もうめんどくせーな!!」

「めんどくせえとはなんだ!! もう一度飛びかかってやろうか?」

「やめろ、わかった。なんだよ?」


 俺は真剣な顔をして雄也を見る。


「なんだ? そんなに真剣な顔してよ?」と不審そうに俺を見る雄也。


 すると、俺は指を回しながら。


「俺、いいこと思いついたわ」

「は? 何がだよ」


 ここ数日間、少し考えてきたことがある。

 それは……。


 そして、俺は雄也を指差した。


「最近よ、考えてたことがあってよ……」

「ふ〜ん、なんだそりゃ?」

「俺さ……イケメンだろ?」


 自分で言うのもあれだが、多分学年でもかなりイケメンだと思う。

 毎日、肌の手入れもしているし。毎日、画面越しに女と話してるし。毎日、ギャルゲーでコミュ力を上げる訓練してるし。


 何か雄也が俺のことを可哀想な目で見ている気がするのだが……。


「そうだな」

「こんな俺にはハーレムが似合うと思うんだ……そこで、考えたんだよ。どうやれば……ハーレムできるかをよ!!」

「あっそ……それはどうするんだよ?」


 いいことを聞いてくれたな!!


 俺はニヤりと笑い。


「そんな、一つだけだ!! 俺は現実世界でメインヒロインを作り上げる!!」


 そう、そうすれば自然とギャルゲーが始まる。

 そうすれば、メインヒロインを元に女どもがたくさん集まる!!

 

「ふふふ、ははは──ッ!! 二次元と三次元の境界線をぶっ壊す!! そして、俺は全ての次元から愛される、真の主人公になってやる!!」


───────────────────────


ご覧いただきありがとうございます。

残念イケメン拓哉くん!編の始まりです!!

拓哉は無事、メインヒロインを手にすることができるのか?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る