第33話 天然巨乳は虜にしたい!1

「なぁ、雄也?」

「んだよ、拓哉?」


 今は昼休み。

 俺と拓也は机と机をくっつけて向かい合うように座り、購買で買ったご飯を食べているところだ。


 昼休みなだけあり、教室はとても騒がしい。

 いや……そこまで騒がしいことはないのかもしれない。

 ……いつもなら──。


『はぁ……人間関係めんどくさいなぁ』

『あ、今嘘ついた』

『ご飯が足りないいいい!!』


 全ての女子というわけではなさそうだ……それでも、いつもより色んな人の心の声が聞こえる。


 いつか起こるとは思っていたが、まさかこんなに早くだとは……。

 つまりは、もうすぐにピークがきてまた、この

【テレパシー】は消えるということだ。

 少し寂しい気もするが、これで消えるのか。


「さっきから……あの子お前のことをずっーと見てるぞ?」

「ん? どの子──」


 俺は拓哉が指差している方を向くと──。


 そこには……。


 じとっ──と教室の入り口から覗いている、桃愛がいた。


 うわ〜十話ぶりのまだ、意図して天然キャラを演じてるぐらいしか情報がないほぼ新キャラさんだ……。


「多分、お前を見てるんだよ」

「そ、そうか!? も、もしかしてモテ期なのか!?」


 どの口があってやがるんだよ。

 お前は元から年中無休でモテ期に決まったんだろ。


 俺は首を横に振り。


「ううん、お前は元からモテ期だから勘違いするな」

「そ、そうか。なぁ、やっぱり、お前を……」


 やっぱり、そのようだ。


 だって……。


『むぎィイイ!! 絶対にあいつを虜に……あの、雄也くんを──っ!!』


 すまない、桃愛よ俺はお前の虜にはならない。

 だって……そのエチエチボディーから繰り出される天然は作り物だから。


「あの子すげぇ身体だな!! ムチムチ巨乳!!」


 こいつは……もう少しオブラートに言ってくれ。

 確かに、デカイしムチムチだけどよ。


 俺は大きくため息を吐く。


「ん? どうした?」


 そして、俺は席を立ち上がる。


「少しあいつのところへな」

「そうか」


 幸い、変な勘違いをしそうな神崎は友達と他のところでご飯を食べている。


『もしかして、私に気づいたのね!! こ、こっちに来てるわ!! このまま、転んで胸をぶつけてやる!!』


 おい、やめろ、その聞きたくない話!!

 たしかに胸に下敷きにされてーけどよ!!

 やめてくれ!!

 聞いちまったせいで……。


 俺が桃愛のそばに行くと──。


『よし!! 今よ!!』


「あ〜!! あぶなーい!!」


『【桃パイ】アタック〜!!』


 こちらに胸から倒れてくる桃愛。


 多分、心の声が聞こえない奴らなら、ラッキースケベやら天然と思われるだろう……しかしな?

 俺にはお前の心の声が聞こえるんだよ!!


 俺は華麗に横にずれる。


「ゑ?」


 今までに聞いたことがない『え』だった。


 こちらを見る桃愛に俺はニコりと笑う。


『ち、ちくしょ──っ!!』


 そのまま、桃愛はおでこから床にバタンっと転んだ。


 聞いちまったせいで……避けたくなるじゃねぇかあああ!!


 その様子に周りの人たちは「…………」と固まっている。


 当然だ、桃愛は何もないところで転んでいるのだ。

 何が起こっているのかわかるはずがない。

 

「ふん」と鼻で笑い、先に戻ろうとすると──。


『こいつうううううううう!! 完全に読んでた!!』

 

 倒れている桃愛は俺の右足を掴んだ──。


「え……」


 そのまま、足を崩し俺はおでこから──。


「あ〜やば〜い!! 間違えて掴んじゃった!!」と可愛らしいトーンで言う桃愛。


 こいつううううう!!


 勢いよく転んだ──。


「いってえええええええ!!」と俺は涙目になり床をゴロゴロと転がる。


 ワイシャツが埃まみれになってしまったが、そんなのは関係ない。


『ふん、お返しだぁあああ!!』


 こ、こいつ……何しやがんだよ!!

 

 そして、俺は大声で叫んだ──。


「いってええええ!!」







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