第32話 生徒会長になったらスカートの下に体育着を履くのをやめさせたい6

 俺は二人を指差して──。


「簡単なことですよ、さっき陸上部の先輩がボソッと言っていましたが時間をずらせばいいんですよ」


 もちろん、その言葉によくわからないという表情をする二人。


『は、恥ずかしぃ〜そ、そういうことなのね!!』


 どうやら、西園寺先輩は俺の考えに気付いたようだ。

 その一言だけで察するとはやはり、西園寺先輩は賢い。


 あ〜、その通りだよ!!


 俺はニヤリと笑い。


「要は、陸上部さんはボールが気づかなくて当たるということをなくせばいいんですよね?」

「まぁ、そうだが……」


 なんだよ、簡単じゃないか……なぜ、こんな簡単なことに先輩たちは気づかないのだ。


「なら、打つのと走るのを交互にやればいいんですよ」


 そう、俺が考えた案はこうだ──。


 そもそも、陸上部がバッティング練習を嫌がるのは気づかずにボールに当たるということだ。

 簡単に言うと走っている最中にボールが当たるということだ。

 だったら、走っていない最中にボールが飛んできたらどうなる……?

 ふと、俺はそんなことを考えた──。

 そう、ボールが視界に入り反応できる。

 そうすれば、ボールに当たることはないのだ。


 俺の発言に二人はボケ〜っと顔を合わせ、何かを話し頷き、再度こちらを見る。


 そして、徐々に二人とも口角が上がりニコりとする。


 そのまま、二人は俺の両肩を手を置いた。


「お前、一年生か!?」

「え……そうですけど」


 なんだなんだぁ──ッ!?

 この状況にあまり理解ができないのだが。

 

 少し俺は戸惑う。


「まじかよ、お前天才だな!!」


 なるほど……そういうことか。


 どうやら、二人は俺のことを褒めているらしい。


 ……いや、逆によく先輩はこの考えに気づけませんでしたね。


 そう失礼なことを言いかけてしまい、俺は唾を飲んで抑えた。


『え……恥ずかしぃ。私が考えていた案と違うんだけど……』


 え、違うのかよ。

 ならなんだ? どんな案を考えてたんだよ!!


 西園寺先輩がどんなことを考えていたのか少し気になってしまった。

 

 とまぁ、こんな感じでミッションはコンプリートしたわけだ……正直こんなクソみたいな案、時間をかけずにも考えつけたなと後になって少し後悔した──。



 今はとりあえず、解決し、全てが終わったためスクールバッグを取りに生徒会室へ戻っている──。


「後輩くん、このまま生徒会に入ってほしいな」


 ふと、そんなことを西園寺先輩は呟いた。


 いや……入りたいのは少し考えているが……。

 なんせ、見た感じ生徒会長以外はみんな部活などで忙しかったりサボりでいないわけだ。

 そのため、西園寺先輩と二人っきり……。

 しかしだ、俺が帰宅部を選択した理由は今日みたいな厄介なことには遭遇しないためだ。

 それなのに、生徒会なんかに入ってしまったら厄介事だらけになってしまう。


 そう考えると絶対に入りたくないのだ。


『後輩くんが生徒会に入ってくれなきゃ……今日みたいな時どうしよぉ〜、想像するだけで恥ずかしいよぉ』


 ここで必殺乙女のトーン、この必殺技のせいで今回はめんどくさいことを引き受けることになったのだ。


 俺は唇を噛んで、『我慢だ、我慢だ』と自分に言い聞かせる。


「すみません、生徒会はちょっと……」

「ふん、そうか。だが、今回のはほんとに良かったぞ」


『恥ずかしいけど、今回のは私の負けだね』


 いいや、そんなことはない。

 だって、元々西園寺先輩があの二人の話に入ったことでことがはじまったのだ。

 もし、あの時入っていなかったら多分こんなにうまくいかなかっただろう。

 俺なんてただ美味しいところを持っていただけだ。


「えへへ、それはありがとうございます」

「あのな、後輩くん?」

「ん? なんですか……」


 すると、西園寺先輩は俺より少し早く歩きこちらを振り向いた。


 そして、両手を後ろで組んで天使のような笑顔で──。


「ありがとう!!」


 その言葉とともにボワッと勢いよく風が吹く。

 いいや、厳密には吹いていないのだ。

 そんな感じがしただけだ。


 俺は照れ臭い仕草をして。


「いえいえ」


 この笑顔を見れただけで今回のは価値がある。

 そんな気がした──。


 なんとなくだが、【テレパシー】があったから俺は西園寺先輩を助けたんだとそう思った──。



『今日さぁ〜帰りどこいく〜』

『うわ、テストの点低いんだけど』

『武くんかっこいい』

『お腹すいたなぁ〜』


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