第30話 生徒会長になったらスカートの下に体育着を履くのをやめさせたい4

 西園寺先輩からの説明が終わり、そのまま時は過ぎていき放課後──。


 ちなみにネットを張るという案は時間がかかるのとお金がかかるため却下された。

 両部、大会まで一ヶ月を切っているため早く他の案を考えなければならない。


 そんなわけで、俺と西園寺先輩はまず最初に野球部の偵察をしに野球部の部室へとやってきた。


 着いた頃にはすでに部活が始まっていた──。


「ばっちこーい!!」と野手たちは構えて言っている。


 雰囲気から言って、野球部は夏の大会が近く少しピリピリしているように感じる。

 空がとても青く、まさしく青春という言葉がふさわしい空間だ。


 しかし、暑い……よくこんな猛暑の中あんなに声が出るよ。

 俺だったら、サボるぞ。

 つーか、普通に練習してるじゃないですか……。


 野球部は陸上部から嫌がられているバッティング練習を堂々としていた。


 ということはだ……。


 俺はバックネット裏を見るとそこでは……。


「なんど言ったらお前らはわかるんだよ!!」

「はぁ!! 何度言ってもわかりませんよ……こっちは甲子園行きてーんだよ!!」


 二人の……両部の部長? が、互いの目を見て睨み合い言い争いをしていた。


 やっぱり、そうなるよな。


 むしろ、都合がいいというべきか。

 なんせ、陸上部の偵察に行く暇を省けたわけだ。

 ここは、作戦変更で二人の話に割り込むのが良さそうだ……。


「よし、あの揉めてる二人のところへ行くぞ」とキリッとした顔で西園寺先輩は言った。


 西園寺先輩も同じことを考えているのか。

 なんやかんやで西園寺先輩は頼れる人だ。

 俺はただ西園寺先輩の言う事に従うとしよう。


「そうですね」


『うぅ〜こわいこわいこわい……そして、恥ずかしぃ!! え、「お、良い身体付きだ!! 俺たちと大人の野球、大人の陸上をしようぜ!!」とか言ってこないよね!? 今日、私の下着上下揃ってないよぉ〜恥ずかしいよぉ〜』


 おい、この人は野球部と陸上部をなんだと思ってんだよ……あと、その上下揃ってないっていうのは言わないでくれよ……。

 まぁ、それでも俺にとってはありがたい情報だけど。

 え、ちなみに柄は色はなんですか?


 大きな深呼吸をすると西園寺先輩は二人の元へ歩き出す──。


 傍から見たらほんとにクールだ。

 顔も学力も体型も全てが完璧な彼女に惚れない男などいない。

 

 くそ〜【テレパシー】がウザすぎる。

 いいや、感謝するべきなのかもしれない。

 なんせ、もしこの能力が使えなかったら俺は西園寺先輩と話すことはあったのだろうか?

 また、神崎とも距離を縮められた気がする。

 そう考えると感謝するべきところもある。


 とても複雑な気持ちだ。

 嫌いな性格だけど顔はドストライク的な感じだ。


 そんな西園寺先輩の後を俺は着いて行った──。


「だからお前が……」

「いいや、お前が……」とデコとデコをくっ付けて近い距離で睨み合う二人。


 ここだけ、空気が違った。

 なんと言うか、今すぐ立ち去りたい。


 そんな中、西園寺先輩は後ろ髪を払い──。


「お話中失礼するぞ?」


 二人の会話に口を出す。


『こわいこわいこわいこわい、めっちゃ二人ともこっち睨んでるよぉ〜肌荒れてたらどうしよぉ〜恥ずかしぃ』


 すると、二人は「「げ、生徒会長!?」」と驚く。


 何故、二人が驚いたのか? そんなのはわかるはずはなく、俺だけ話に置いてかれてる気がした。


「ああ、そうだ。みんなの頼られ者の西園寺香澄だ」


 うわぁ〜たしかにそうだけど、自分でそれ言うの……。


『自分で言うとか……恥ずかしぃ、死にたい!!』


 いや、思って言ってんのかよ……なら、言わなければいいのに。


「それでだが、本来なら自分たちの力でなんとかしてもらいたいのだが……やむを得ない、私とこの後輩くんが悩みを解決してやろう」


 さすが西園寺先輩!!

 自分たちの力で問題は解決する事に意味がある……そう言いたいんですよね!!


 実際は気付いてるよ……ほんとは、恥ずかしいかって……適当にぽい事言えば良いって事に。


『ほんとはあまり、怖くて恥ずかしくて話したくなかったからだけど……』


 ほら、やっぱりそうだった。

 さすがにもう騙されない。

 西園寺先輩のことがわかってきたぞ。




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