第29話 生徒会長になったらスカートの下に体育着を履くのをやめさせたい3

 次の日の昼休み──。


 俺はお弁当を持って生徒会室のドアをトントンとノックする。


 理由は昨日の夜、西園寺先輩から昼休みにこちらに来て欲しいとLINEが来たからだ。


 俺的にはボールが飛ばなくすればいいのならグランドにネットを張るという考えがある。

 少し金はかかるがそこら辺は生徒会長に任せるとして、ついでにこの案も言いに来た。


『も、もう来ちゃったのぉ〜お弁当まだ食べ終えてないよぉ〜今日、パンダのキャラ弁にしちゃったしぃ〜見られたら恥ずかしいよぉ〜』


 ん? 今の発言からして西園寺先輩が自分で作ったのか?

 ……なにそれ見たい!!

 めちゃくちゃ見たいんですけど!!

 こういう少しクール系からズレた行動がまたいいんだよなぁ〜。


 すると、ガラガラとドアが開き──。


「来たか……待っていたぞ」


 横髪を払いながらそう言う西園寺先輩。


 クールなのだが……。


『うう〜結局、お弁当食べきれなかったしぃ〜午後にお腹鳴ったらどぉ〜しよぉ〜』


 心の声が聞こえてしまうとどうしても、クールよりカワイイとしか思えない!!

 全然、恥ずかしくないからお弁当を食べてください!!


「……はい、それで話とは……」

「ふん、まぁ中で──」

「はい!」


 お弁当が見たい!! そんな欲望が少しあるが今は我慢しておこう。


 そして、俺と神崎さんはパイプ椅子に座る。


 こうして生徒会室に入るのは三度目だ。

 もう自分の教室みたいなものだ。

 そのため、何の緊張だとか生徒会役員じゃないのに中にいるだとかの、罪悪感に近いものがない。


 中には他の生徒会役員はいなかった。


 全く、西園寺先輩だけに任せやがって……他の人たちは何をしてんだよ。

 特に副会長だ。

 No.二として生徒会長の隣にいやがれ!!

 それか俺にそこの座を譲れ!!


『お弁当食べたいよぉ〜』


 おっと、西園寺先輩のためにも早くことを済ませ、ご飯を食べる時間を取れるようにしよう。


「それで、西園寺先輩?」

「……ああ、後輩くんをここに呼んだのはだな? 今日の放課後、一緒に偵察する件について話しておきたいことがあるからだ」

「え……それならLINEでも?」


 現代っ子なのだ、そういった連絡ツールはバカみたいに沢山ある。


 LINEで話せば、お弁当を食べる時間ももっと取れただろうに……。


「ふん、たしかにそっちの方が楽だな。しかし、LINEなどの言葉には感情がないだろ? 私はそれがあまり好きではないのだ」


 なら、電話は?

 そんなことを考えたが、西園寺先輩がすごいと思った。


 たしかに、LINEなどの声が聞こえず文字だけの連絡ツールには感情なんてない。

 そのため、相手が誤った受け取り方をする可能性が存在する。


 そんなことを考えていた西園寺先輩がほんと、すごいと思った──。

 

 だから、俺は西園寺先輩に憧れてるんだ……再度、そのことを理解する。


「──やっぱり、西園寺先輩はすごいです!!」

「ふん、そうか?」と腕を組み当然そうな顔をする西園寺先輩。


『本当は文字が打つのがめんどくさいなんて恥ずかしすぎて、死んでも言えない!! よかったぁ〜まんまと納得してもらえて……私もできれば、LINEで話したかったよぉ〜』


 やめてくれ……そんなこと考えないでくれ!!

 せっかく、憧れているのに心の声のせいで複雑な気持ちになる。

 やっぱり、俺は【テレパシー】が嫌いだ。


 この能力がなかったら……そんなことを少し考えしまった……。


 きっと、昔みたいに一ヶ月後には消える……そう信じたい。


 まだ確定してはいないが、一ヶ月後には消えると考え込んでしまっていたせいか、少し安心していた気がする……。


 もし、消えなかったら?

 いいや、そんなことよりこの時期ぐらいから徐々に聞こえる量も増えてくるのだ。


 そう考えると、少し怖がっている自分がいた。


「ん? どうした後輩くん。顔色が悪いのだが……」


 考えるな、今はそんなことよりだ。


「あ、多分気のせいですよ」


『嘘……でも、後輩くんがこうしてるなら理由は聞かない方がいいよね』


 ……あざす。

 そうしてくれるとありがたいです。


「ならいい、それじゃ、今日の説明といこうか」


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