第26話 生徒会長の頼み事
ある日の放課後のことである──。
「えーっと、俺を生徒会室に呼んだ理由は……?」
今俺は西園寺先輩と二人で生徒会室にいる。
生徒会の窓からはグランドが見える。
そのため、外では運動部たちが一生懸命部活をやっている姿が見えて少し、罪悪感が……。
ほんとよくやるよな。
こんな暑い時期によ。
さて、なんでこの生徒会役員ではない俺がここにいるのかというと……。
『え〜それ聞くのぉ〜、他の人たちはみんな部活でいないって……他に話せるのが後輩くんしか言えないなんて言えないよぉ……恥ずかしいよぉ』
──らしい。
なるほど、そういうことか。
西園寺先輩は表ではクールだが、裏では恥ずかしがり屋さんだ。
たしかにそこまで仲のいい人はいなさそうだよな……。
普通に裏の顔を出せばいいのに。
そんなことをつくづく思ってしまう。
それでも、俺の好感度は他の人より高いらしい。
憧れの先輩としてそれはそれで嬉しいな。
「そうだな。後輩くんが頼りになれるからかな」
そう横髪を払いながら言う西園寺先輩。
その姿は美しくクールだった。
『恥ずかしい、恥ずかしい。死にたい!!』
……心の声が聞こえてなからば絶対に惚れてたわ。
「はは、そうですか……」
灰のような顔になる俺を見て「?」と疑問そうに俺を見る西園寺先輩。
『どうしよぁ〜後輩くんに嫌われちゃったのかな?』
いや、そういうわけではなくてですね。
少しなぁ〜なんというか……心の声が聞こえるのが憎いんですよ。
「それでですけど、呼んだ理由は?」
「そうだな。後輩くんはほんとに頼り甲斐があるような気がするんだ。だから、そこで後輩くんには一つ手伝ってもらいたいことがある」
そう言いながら、俺に一枚の紙を見せる西園寺先輩。
『き、決まった……けど、恥ずかしい。今、「先輩うざいとかカッコウつけるな」とか思われてないかな?』
えー、別になんも思わなかったんだが……え、今の決まったとかそういうやつだったんですか?
まぁ、そんなのはさておきだ。
俺は一枚の紙に目をやった……。
「……野球部と陸上部のグランド問題……?」
そう言いながら俺は首をかしげた。
あー、多分あれだ。
前の伏線的なやつだなこりゃー。
え、やだなんだけど……普通にめんどくさそうじゃん。
もうすぐ甲子園地区大会がはじまるのだ。
そりゃー、野球部はグランドを使いたいに決まってる。
そして、陸上部も陸上部で甲子園地区大会と被って大会があるらしい。
つまりだ、これはめちゃくちゃめんどくさいことになるぞ……おい。
『やっぱダメだよね……断られるんだ……恥ずかしいなぁ』と乙女トーンで言う西園寺先輩。
くっそ〜なんでそんなに可愛い声で言うんだよ!!
断りずれーよ。
ほんと【テレパシー】を使っていいことがない。
ふざけんなよまじで。
「それでどういうことで揉めてるんですか?」
大体グランドと聞けばわかる。
多分あれだろう、グランドの使う時間。
お互いにトレーニングでグランドを広く使いたいのだろう。
めんどくせーよ、自主でそこらへんでトレーニングしろ!! なんて言ったら多分運動部たちからしばかれるから絶対に言わない。
すると、西園寺先輩は足を組んで両肘を長机に置く。
「ん? そて……」
『か、噛んじゃったよぉ〜恥ずかしいよぉ〜』
か、かわええ……。
「ゴホン、すまない。それでだが……今、両部活とも大変な時期に入っている」
「はい、それはわかります」
「そこで、野球部は今バッティング練習? とやらをいつもならゲージの中でやっているのだが丁度、ゲージが今工事中でな? そこで野球部は普通にグランドでやっている。そのため、陸上部の練習場所が真正面にあるからボールが飛んできてだな。『危ないからやめてくれ』って感じになっているらしい……」
え……それって、野球部が悪くね?
『か、噛まずに言えたぁ〜』
いや、仕方ないことなのか?
たしかに、仕方がないことだ。
なんせ、野球部も大会が近い。
「そこでだ、後輩くんには私と一緒に両部活の偵察に行き、いい解決方法を考えてほしい」
ふん、やなこった……めんどくさそうだし……。
『来なかったらどうしよぉ〜一人とか恥ずかしいよぉ〜』
くそ、なんで可愛いらしい声で言うんだよ──ッ!!
あああ──ッ!!
「よし、手伝いましょう!!」
あ〜めんどくさいことになったなぁ……どっちかを敵に回さない方法を考えなければ……。
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