第25話 神崎との下校イベント3

 サーティワアに着くと、みんな同じことを考えているためか列ができていた。

 その列の大半は中学生や高校生だ。

 多分、寄り道というやつだろう。

 幸い、同じ高校の制服は見当たらない。

 

 ふぅ〜良かった。

 同じ高校の人が一人ぐらいはいると思ったが、そうではないらしい。

 まぁ、ここまで並んでアイス買うよりコンビニでいいよな。


 普段なら、この時点でコンビニでアイスを買って帰るレベルだ。

 しかし……。


『アイス何のフレーバーにしよ〜。やっぱり、パチパチは……あとミント、ミントがいい!!』


 こんなに楽しそうにしているのだ。

 邪魔はしたくはない。

 え、パチパチとミント合うのか?

 まぁいい……俺は大人しく抹茶のシングルにするとしよう。


「並ぶか?」

「うん!! ……いや、ゴホン。並んであげてもいいわよ!!」


 やれやれ……これだからツンデレは。


「なぁ、神崎?」

「何?」


『いきなり真剣な顔してな、何よ!!』


 俺はクスッと笑って。


「やっぱり、お前ってツンデレだよな」


 その言葉に顔をカァーっと真っ赤に染める神崎。


「ば、バカ!! そんなんじゃないし!! てか、キモい!!」


『わわわわ、私がツンデレ……? で、でも……確かに、ツンツンした当たりの気がするけど……こ、これじゃあ……大好……大嫌いな雄也に嫌われる!!』


 おい、大嫌いな奴に嫌われるっていいことじゃないのか!?

 俺だったら嬉しいぞ!!

 てか、俺のこと大嫌いなの!?


 そして、神崎は満面の笑みでこちらを見る。


 神崎の表情はまるで天使のようだった。

 

 その瞬間、俺は目を大きく開いた。

 

 それは、神崎のその美しい表情に驚いたからだ。

 そのくらい美しかったのだ。


 やっぱり……神崎は可愛いな。


「大嫌いな雄也!! 早く並ぼ!!」


 これはひとつ語弊があるな。


 俺はため息を吐いて。


「そうだな!!」


 それは、神崎はデレじゃなくて死ねだったこと……やっぱり、こいつはツン死ねだわ。


 一人クスリと笑うと俺と神崎は列に並んだ。


『バカ雄也!! あああああ、また正直になれなかったああああああ──っ!!』


 ふん、その神崎が一番可愛いよって、何彼氏みたいなこと言ってんだろ俺。


 少し彼氏ぶってしまい恥ずかしいのだが。


「ねぇ、雄也?」

「ん? どうしたんだ?」


『よし、私……言うんだ!!』


 え、なんすか?

 何その乙女なトーンはよ!!  

 はっ──!! もももももしかして、こ、告白!?


 いや、知ってるよこれが勘違いってやつことぐらい。

 それでもこういうのやってみたかった。


 覚悟を決めたのか俺の方を向いて──。


「アイスダブルにして、私にオレンジちょうだい!! ほら、雄也ってシングルでしょどうせ」


 ほらな? そんな告白なんてないんだよ。

 この地球はそんな都合が良くないんだよ。

 っつーか、なんで知ってんだよ、俺がシングルにすることを!!

 こうなると意地悪したくなるな……ふはは。


「無理だ。ごめんよ俺もダブルだ」

「はぁ!?」


 なんで驚く表情まで可愛いんだよ!!


「え、雄也は何と何に……」

「ん? 抹茶のダブルだ」


 ほんとは一つでいいのだが、こういうのは意地悪した方が楽しい。

 いや、ドSではないからな?


「お、同じアイス……」


 当然の反応だな。

 なんせ、本来、ダブルというのは二つの味を楽しむためにある物なのだから。


『え、同じアイス二つって……雄也って抹茶大好きなの!? そういうことだよね?』


 あながち間違ってはいないが……一つで十分だよ。


「この意地悪雄也!!」

「ははは、もっと言うがいい!!」


 お、なんかこういう感じ、小学生以来だ……。

 そのせいか、とても楽しかった──。


「バカアホ!!」

「なんとでも言うがいい!!」


 あ〜、なんで神崎が俺と距離を取っていたのかは未だによくわからない。

 なんだ、『友達として好きだから』とかさ。

 それでも、またこうして徐々に距離が昔みたいに戻ってきていることに感動だ。

 案外、【テレパシー】も悪いことだらけではない気がする……。


「この、意地悪バカアホチンカス雄也!!」


 おい、美少女が『チンカス』は使っちゃダメだ。

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