第18話 ギャルゲー関係なくね?

 とまぁ、俺は西園寺先輩とLINEを交換してスクールバッグを取りに教室に戻ると──。


「やっと帰ってきたか雄也」


 俺の席には拓哉が座り、足を机の上に乗せてカッコウをつけていた。

 

 すぐさま、俺は拓哉に近づき、拓哉の頭を思いっきり叩く──。


「うげ、いってぇな!!」

「なら、足を下ろせ……机が汚くなるだろうが」

「ちぇ、わかったよ。カッコいいと思ったのに」


 こいつだけは、【テレパシー】を使わなくても裏の顔がわかる。

 素でやっていればカッコいいのかもしれない。

 てか、今の時代そんなことする人なんているのか?


「カッコ悪いよ……変に目立っててよ。それで、お前部活は?」


 本来、拓哉はこの時間、漫研に行っているはずだ。

 そして、俺の先にいることから俺に用があるのだろう。


「ん? んなの、今日は休みだ」

「ほぉ」


 まぁ、たまには休みの日もあるのか。

 運動部と違って雨でも部活動がある文化部のくせに……。


「それで? 何の用だよ」


 多分、『一緒に帰ろう』とかそんな感じだろう。

 それなら、親友? としてあたぼーよ。

 地獄まででもついていってやろう……嘘です。

 

「お前に手伝って欲しいことがある……」


 そう言いながら、拓哉は俺の両肩に手を置いた。


 珍しいな、こいつが俺にお願いするなんて……でも、大体予想はつく。


「それで? なんだよ?」

「……ギャルゲーを手伝って欲しい!!」


 ほら、やっぱり……こいつが俺にお願いするときは『ギャルゲーを手伝って欲しい』か『ゲームの列に代行して並んで欲しい』のどちらかである。 

 後の方は毎回拒否してるけど。

 誰かのために何かするのはめんどくさい……。


「そんなことかよ。いいぜ、手伝ってやるよ」


 でも、前の方はかなり自分のためになる。

 どうすれば、女子と話せるようになるかの勉強になるのだ。

 実際ならないと思うだろ?

 しかしだ。なかなか、女子に馴れるんだぜそれが……。

 その実例がこいつ……拓哉だ。

 たとえば……。


 すると、めちゃくちゃ運がいいことに……。


「拓哉くん……これとこれどっちが可愛い?」と一人の女子がクマの柄、パンダの柄のシャーペンを持って拓哉の前に現れる。


 拓哉は手を顎に置いて「う〜ん」と悩む仕草をして。


「どっちも君が可愛いすぎるから、可愛くないかな」


 く、くさいセリフすぎる!!


 その言葉に女子はカァーっと顔を赤く染めて……。


「あ、あざす……」と女子は照れながら去っていく──。


 ──あれ? ギャルゲー関係なくね?

 むしろ、その口説きは少女漫画のヒーロー!!


 とまぁ、こんな感じで女子を口説くのが上手い。


 ──あれ? ギャルゲー関係なくね?


 その光景に、拓哉は机をドンと台パンする。


 そして、深刻そうな顔をして。


「くそ、なんで今ので落ちないんだ!? あんなに俺は……ギャルゲーの力を使ったのに──ッ!!」


 ──あれ? ギャルゲー関係なくね?


 百パーギャルゲーであんなセリフ言うのか?

 言うかもしれないが、俺が今まで拓哉にやらされてきたギャルゲーであんなくさいセリフ聞いたことねーぞ。

 いや、言うのか……あんなくさいセリフで口説くのか!?


「なぁ、拓哉?」

「ん?」


 俺は拓哉の右肩に手を置いて。


「よし、ギャルゲー手伝わせてくれ!!」


 あんなくさいセリフを言うのか少し気になった。

 もしかしたら、言うのかもしれない。


「そうか、お前もギャルゲーしたいのか!!」


 別にしたいわけではないが、くさいセリフを言うのか気になった。

 いや、ガチでギャルゲーをしたいわけじゃないからな?


「いや、まぁ……」

「俺さ、将来、ギャルゲーの力で女を全員落として最高のハーレムをしたいんだ!!」と突如、子供みたいに『サンタさんはいる──ッ!!』ぐらいの輝かしい目でいかにも『できる』と言わんばかりの、トーンで言う拓哉。


 いや、無理だろ……。

 一つ言うが、ギャルゲーはファンタジーだ。

 あんなの現実世界では起こらない。

 だから、ギャルゲーは楽しいのに……こいつ、それをわかってねぇ。

 俺より普段、ギャルゲーしているくせに!!

 現実の厳しさを教えてやろう……。


 だから、俺は真顔で──。


「いや、あれファンタジーぃいいいいい!!」


 次の瞬間、拓哉は俺の顔面を思いっきり殴る──。

 そのまま、俺は床に倒れた──。


 こいつ……なにしやがんだよ!!


「なぁ……雄也?」

「なんだよ?」

「ファンタジーは向こうじゃなくてここの世界なんだぜ?」


 あ、こいつ……完全に生きてる次元がちげーや。

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