第17話 LINE交換

 さて、まぁ、俺が西園寺先輩に会いに来たというのは過ち間違えではない。

 だから、向こうが変な風に捉えているだけであり、俺は堂々しよう。


『どうしよ〜。後輩くんに好きって!! でででで、でも、私は恋愛経験ゼロなんだよ!! ゼロってバレたら恥ずかしいからごめんね!!』


 へぇ、少し意外だな。

 西園寺先輩は完璧な人間だ。

 だから、勝手に恋愛経験も豊富な人だと思っていた。

 しかし、そうではないらしい。


 ほんとに【テレパシー】は怖い。

 今だって、秘密にしておいていることを知れてしまうのだ。

 こんな能力があれば絶対にいつか、俺のことだ。

 誰かを不幸にしそうだ。

 だかは、そのためにも早くこの能力の規則性を知って制御、もしくわ消す方法を考えなければ。


「それでですが、俺は一つ西園寺先輩に聞きたいことがありまして……」

「なんだい? それは?」


『??? あれ? 私に会いに来たんじゃないの?』


 何でそうなったのかの理由があるんだよ。


 さて、どうする?

 ここは何て言うのがいいんだろうか?


 堂々と言うのは間違いだろう。

 いや、これが正解だったら、ややこしいことになる。

 俺はなるべく【テレパシー】のことは周りに伝えないでおきたい。

 伝えてしまったら普通が終わるからだ。

 もう終わってるかもしれない、それでも、これ以上にはなりたくない。

 きっと、周りは俺から離れるだろう。

 なんせ、自分の裏の顔を知っているみたいなもんだぜ?


 なんとかして、LINEを交換する方法を……。


「学校の用事……」


『あ、目が動いた』


「嘘だね」

「え……」


 なっ──、この人今、『目が動いた』って……。

 いやいや、驚くことはない。

 西園寺先輩のことだ。

 そのくらいできるだろう。

 

 しかし、そうなってくると嘘はつかないのか?


 試しにもう一度──。


「クラスの用事……」


 今度は目を動かさないでただ無心に西園寺先輩を見つめた。


『後輩くんのクラスがここに来る理由はないよ? 嘘だね……』


「嘘だね」


 だめだ。

 この人の前で嘘は通じねーや。


『さっきから、私を見てて恥ずかしぃ〜』


 その言葉に俺は目を逸らした。


 さてさて、本当のことを言うのが正解なのか?

 『LINE交換してください!!』なんて言葉、俺はまだ一度も使ったことがない童貞だ。

 ここで使ってしまうのか……捨てていいのか?


 絶対にいやだ。

 この言葉は本当に好きな人ができたら使いたかった。

 こんなところで使うとは思っていなかった。

 というか、実際は使いたくない。


 でも、使わなきゃ話は進まない……しゃーないな。


「ほんとはですね……」


『なんだろ……すごい真剣に私を見てる!! す、好きなのかな!? そういうことなのかな!? は、恥ずかしいよおおおおおお!!』


 お前より、俺の方が恥ずかしいわい!!


 俺はスマホをポケットから取り出して──。


 一礼する──。


「俺とLINE交換してください──ッ!!」


 ──言ってしまった……さよなら、『俺とLINE交換してください』童貞よ!!


『ららららららLINE!? 後輩くんとLINE→異性とLINE→恥ずかしいっ!! やだだよぉ〜』


 ねぇ〜それじゃあ、何でも終点は『恥ずかしい』になるじゃねーかよ。

 異性とLINEすることが恥ずかしいのか……?

 待て待て待て、俺初めてじゃん!!

 異性とLINEするの。

 普段は家族ぐらいだぞ異性!!

 最近は神崎と石川さんともLINEをしているが、別に異性なんて忘れてた。

 しかし、今回はバリバリの異性と感じてしまうのだが。

 恥ずかしい──ッ!!

 え、俺、LINEできるかな!?


「いいわよ。LINEね……」


『い、異性とは極力避けてきたけど……前の選んでくれたお礼もあるし、仕方ないよぉ〜』


 あ〜俺と真逆なやつを選んだあれな。

 あれを『選んでもらった』に入れてくれるのかよ。


「はい、オッケーだな」

「はい、ありがとうございます!!」


 まぁ、無事にLINEを交換することができ、ミッション達成したのだが……。


『後輩とLINE交換してしまった……しかも、後輩くんと!! こういうのは自分からいくんじゃないのかな!? もっと先輩っぽくしたほうがいいのかな!? 恥ずかしいよぉ〜』


 なんか、ごめんなさい……。











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