第16話 クールで恥ずかしがり屋さんな生徒会長

 放課後、俺は生徒会室へと向かう──。


 理由は簡単だ。

 西園寺先輩に会いに行くためだ。


 この先、西園寺先輩も俺のこの能力についての鍵になってきそうだ。

 LINEを交換できるぐらいまで、関係を進めておくことにしよう。


 しかしだ。

 昨日のダブルデート(?)でわかったことがある。

 それは、自意識過剰かもしれないが二人とも俺のことが『好き』だということだ。

 神崎は俺を友達として……石川さんはガチの方の好きとして……。

 そうなってくれば、『好き』という感情が鍵となるのでは?

 なら、なんで西園寺先輩は?

 そうなってくる。

 だから、今からはそこを考えていこう。


 俺は生徒会室につくとコンコンとノックをする。


『だ、誰か来ちゃったよぉ〜他の人いないし……恥ずかしぃよぉ〜』


 よかった。

 どうやら、今は西園寺先輩一人だけのようだ。

 そっちの方が好都合。

 後は適当な理由をつけて話をして好感度を上げよう。


『行くしかないかぁ〜』


 すると、ガラガラとドアが開き──。


「ん? 誰だ?」


『クール。私、クールを意識するのよっ!!』


 昔なら、かっこよくて惚れていただろう。

 でも、心の声が聞こえちゃうとな……。

 まぁ、ギャップ萌えというのかこれはこれで可愛いけど。


「昨日ぶりですね。西園寺先輩!!」


『なんだ……後輩くんか〜よかった〜。最近は野球部の部長と陸上部の部長が少しピリピリしてるから、それだったら怖かったなぁ〜』


「ああ、久しぶりだな。後輩くん」


 やはり、ある意味この人は尊敬できる。

 なんせ、心の中では弱気のくせに頑張ってクールを保ってるんだぞ。

 普通にすごいと思う。


「久しぶりって……まぁ、昨日は久しぶり……」


『たたたたた確かに──っ!! 昨日が久しぶりって!! ははは恥ずかしい──っ!!』


 それは、一瞬の出来事だった──。


 真っ赤に顔が染まろうとしたが、西園寺先輩はそれを唇を強く噛んで回避する。


 多分、西園寺先輩の裏の顔を知っているからこそ気づけたのだろう。


「まぁ、そんなことよりだ。後輩くん? 君は何しに生徒会室へ? あ、そうだ。当ててやろうか?」


 俺は唾をごくりと飲み。


「それじゃあ、当ててみてください」


 こう見えて、西園寺先輩はかなりの洞察力と思考力がある。

 そのため、ほぼゼロに近い情報から答えを導かせることができるのだ。

 といっても、多分俺が来た理由を当てるのは不可能だ。


『どうしよう……後輩くん、別に用事があってくるような生徒じゃないし……つい、いつもの感じで言ってしまった……正直、わかんないよぉ。外したら、恥ずいしぃ〜……』


「とりあえず、ここじゃあれだ。中に入れ……」


 うまく回避したな……。

 でも、俺は食らいついてやる。


「じゃ、それじゃあ……入ります」


 俺は生徒会室の中に入った。


 生徒会室はよくアニメや漫画にある、あんな豪華なところではなくただの教室のようなところに、長机が置かれてパイプ椅子があるだけという、現実味がある場所だ。

 まぁ、多少本棚にボードゲームなどがあるが、快適ではない。

 少し残念だが、現実世界はこんなものだろう。


「それで、何でだと思いますか?」


 普通、ここは話の話題を変えるところだろう。

 だが、俺は攻めてみた。


 なんか、普段クールの完璧な人間が裏では恥ずかしがっている姿は見ていて楽しい。

 いや、別にSとかではないからな!!


『話、そ、そらしたのに、まだその質問!? あわあわ……ど、どうしよう!?』


 ふふふ、その考え方はお見通しだ。

 さぁ、恥ずかしがれ──ッ!!


『わかんないよぉ……このまま、外したら私、死ぬほど恥ずかしいよぉ〜』


 ポーカーフェイスというのか、クールな真顔でこんなこと考えているとなると……。


「ぷっ──」


 少し、面白いのだが……。


『え!? 笑った!? わ、私何かしたぁああ!? したなら、恥ずかしいよぉ〜』


「わかったぞ?」

「はい?」


『そういうことかぁ、笑ってるその感じからして……』


「私に会いに来たのか?」


 どどどど、どっからその思考が!?

 え、今の話にその考えになるのは……。


『恥ずかしい、恥ずかしい』


 どうやら、自分が言っていることが恥ずかしいようだ。

 遠回しで『私のこと好きか?』的な感じだもんな。


『死にたい、死にたい、死にたい、死にたいよぉ〜、外してたら、恥ずかしすぎて死ぬっ!!』


 こんなこと考えられてたら、『違う』なんて言えねー。

 

 だから、俺は笑顔で。


「はい!!」

「やはり、そうか」


『やだ、合ってたっ!! でも、恥ずかしいよぉ〜』





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