第15話 ダブルデート(?)編7

 待て待て、意味がわからない。

 なんで、俺が一人で水族館を回らないといけねーんだよ!!


「一人……?」

「はい。じゃんけんで最後負けましたし……」

「それ、俺もかよッ!!」


 え〜やだなんだけど……一人で水族館回るとか。

 

 俺にとって一人で水族館回るとか、一人でファミレスに行くぐらい俺にとってはレベルが高い。

 いや、多分一度行けばファミレスは慣れると思うが……一人で行けねーよ。


「じゃあ……私たちはこれで」

「楽しんできてください」


 そう言うと二人は去っていった──。


 ──いや、やめてくれよ俺を一人にしないでくれよ。


 完全に二人が行ってしまうと。


「しゃーね。お土産でも見て時間を潰すか」


 別に一人で水族館を回るほどの勇気がない。

 多分あれだ。

 それが陰キャよりのカーストに俺がいる理由だよな。

 


 ということで、俺は一人、お土産コーナーにやってきた。


 お土産コーナーはここしかないため、それなりに広い。

 隣にはフードコーナーがあり、お昼時なだけあり混んでいる。

 それに比べてお土産コーナーはかなり空いていた。


 ここなら、四十五分くらい簡単に潰せそうだ。


 とりあえず、適当に魚たちのキーホルダーを見ていた、その時だった──。


『このぬいぐるみ可愛いな」


 そんな声が聞こえた。


 その声は神崎でも石川さんでない。

 全く聞いたことがなかった心の声だった──。


 このタイミングでまた新しい人の心の声が聞こえるとは……。


 俺はその声がした方へ歩き出す。


 これをチャンスだと見たからだ。

 これで、この能力が知人専用なのかどうかについてわかる。

 多分、知人専用の気もするが、この心の声は聞いたことがない。

 なら、なんだ? 知人じゃない人か……?


『こちらも可愛いな』


 俺は急いでその心の声の主のところへ早歩きで向かう──。


 声からして女子ということは確定だ。

 やはり、昔と一緒でこの能力は女にしか発動しないと考えて良さそうだな。


 そして、俺はその心の声の主の元へ辿り着く。


『これも捨てがたいな』


 その言葉と同時にその人の姿を見て、目を大きく開いた──。


『ん〜悩みところだ』


 そこにいたのは……。


 西園寺生徒会長だった……。

 フルネームでは西園寺香澄。

 その高スペックな頭脳のおかげで、二年生でありながら生徒会長を務めている、憧れの先輩だ。

 三年生を置いての二年生徒会長のため、学校で知らない者はいないレベルの人だ。

 いわば、完全に俺TUEE生徒会長。

 残念なのは胸がないことぐらい。


 俺に気づいたのか、二つのぬいぐるみ(ジンベエザメとペンギン)を両手に一つずつ持ち、こちらを振り向いた。


「ん? どうした……あれ? 君はうちの生徒だね?」

「え?」


『あれ〜違ったぁ〜……は、恥ずかしいよぉ……』


 ん? ……今のなんだその可愛らしい声は!?


「どうだい? 君は……」

「え、西園寺先輩ですよね?」

「そうだ。私は山森高校の生徒会長である。西園寺香澄だが……」


『やばいよぉ〜生徒会長とかカッコつけちゃった……恥ずかしい』


 なんだ? その心の声は……。

 え……もしかして……。


「ですよね。いや〜まさか、こんなところで西園寺先輩が一人だとは」


『この後輩くんひどいよぉ〜、私、水族館好きだけど行く人がいないだけなのにいいい……こんなところ見られて恥ずかしいよぉ〜』


 やっぱり、そうだよな……クール系の恥ずかしがり屋さん!?

 心の声からしてほぼ確定だよな?


「そうだ。君は?」

「あ、俺は、小倉雄也です」


 まさか、憧れの先輩の裏の顔は恥ずかしがり屋さんなんて……また、知りたくないことを知ってしまった。


「そうか、後輩くん。それで、どっちがいい?」


 結局、その読み方なのね。


『え〜、小倉くん? 小倉さん? 雄也くん? 雄也さん? 誰で呼べばいいかわかんないよぉ〜、恥ずかしいし〜』


 なるほどね。

 なら、いいです。


「そうですね……」


 やはり、ペンギンだよな!!

 ペンギンしかないよな!!


「こっちです」


 俺はペンギンをさす。

 

 すると、「そうか」とペンギンを戻しジンベエザメのぬいぐるみのみを手に持った。


 え、なんで? なんで聞いた!?


『ここで、私がペンギン取ったら好きって思われる……恥ずかしぃ〜』


 なら、しゃーねーな。


 いや、思わないからな!? そんなこと。


 こうやって、どんどんと聞こえる人が増えていくのか。

 その懐かしさに少し感動する。


 まだチョロ口だ。

 日に日にどんどんと聞こえる心の声の量は増えていく。

 昔は最大で十人ほどまで増えたものだ。  


 なんか、これ以上、人の裏の顔を知りたくない──ッ!!


「ありがとね、後輩くん!!」と俺にウインクすると西園寺先輩は去っていった──。


 か、かっけぇ……。


『は、恥ずかしいっ!!』


 こうして、俺の水族館ダブル(?)デートは終わったのだった──。



「見なさいこの写真!!」

「あたしの写真こそ──っ!!」

「「………」」

「「浮気っ!?」」


───────────────────────


クール系恥ずかしがり屋さんキャラ登場!!




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