第13話 ダブルデート(?)編5

「次の人〜……彼女さん可愛いですね!!」

「彼女じゃありません……妻です」

「おい」



 写真撮影が終わり、俺たちは自分たちの写真を見ながら歩いている。


 この時点の半分の時間を使ってしまっているため、イルカショーは無理だな。


 ちなみに、写真はハートの形を二人で作っているものだ。

 カップルでやるなら、あれだが……俺たち付き合ってないんだよなぁ……。


 石川さんは満面の笑みでこちらを見て。


「あたし、この写真を一生大切にします!!」


 まぁ、石川さんのためになったらなら悪くねーな。


「そうか、待っててくれよ」


 写真は一枚しかないため、どちらか片方が持つことになる。


 二枚くれてもいいじゃないか!!

 そんなことを思ってしまう。


「はい!!」


『ふへへへ、これで、オナ道具が増えた///大好きです。小倉くん///』


 おい、やめろ。

 気持ち悪い……。


「それで今からは……」

「そうですね。もう時間はありませんし、そこら辺をウロウロと……」

「いいのか? そんなのでよ?」

「え?」


 もっと攻めてくることを俺は覚悟していたのだが。 

 案外そんなことなかったみたい。


「いや、なんでもない……」


 すると、石川さんは少し前に立ち腕を後ろで組んでこちらを振り向く。


「もう大丈夫です!! 今日欲しかったものはこれが全てです!!」


 心の声が聞こえないところからして、本気だな。


「そ、そうか……」


 ならいいか。

 まぁ、俺も一応美少女とツーショットを決めたんだ。

 お腹いっぱいだわ。


 その後は水槽を見て回り、そこに泳ぐ魚たちを見て時間を潰した──。


 こちらとしても、石川さんが俺のことが好きになった理由を聞けてよかった。


 そして──。


「次は私ね!!」

「小倉くんとあ〜んなことやこ〜んなことを〜」


 やめて、何もしてないから!!


「ぐぬぬぬ……」と石川さんを睨む神崎。


 それはどういう意味でやってんの?

 睨んでるのか? 


「いいでしょ〜」


 すると、神崎は俺に近づいてきて。


「この浮気野郎──っ!!」と泣き目で俺の脛を思いっきり蹴る神崎。


 そのまま、俺は横転になり床を転がる。


「いったあ!!」


 浮気ってなんだよぉ〜あれ? 俺、今なんかしたか?

 浮気するようなことしたか? そもそも、神崎は俺のことが嫌いじゃねーのかよ。


 こいつの思考が読めねぇよ。


「ふん、私の方が雄也の記憶に残るようにしてやる!!」

「へぇ……楽しみにしてますわ!!」

「ええ、してなさい!!」


 二人は睨み合い、しばらくすると「「ふん!!」と同時にそっぽを向いた。

 

 こいつら、これ練習してのか? ってぐらい息があってんだよな。


『まぁ、彼女は処女。そこまでエロいことはできないでしょう……』

『これを超えること、超えること』


「じゃぁ、四十五分後……」と石川さんは去って行った。


 俺は神崎の方を向くと少し不安そうにしていたので、俺は手を繋ぐ。


「え……」

「行くか」

「ば、バカぁ……」


 さてさて、この際、こいつから一つ聞きたいことがある。


 そのことを俺は歩きながら問うことにした。


「なあ、神崎?」

「何?」


 やはり、少し俺と距離をとってる感じがする。

 

 俺は一体、何をしたのだろうか。


「なんでそんなに俺と距離を取ってんだよ……?」


 俺はもっと、神崎とは近い距離でいたい。

 いや、彼女的な意味じゃなくて幼馴染としてだよ。


『やっぱり、そのこと聞くよね……私が距離を取る理由なんて一つしかないよぉ〜』


 そして、神崎は俺の右ほっぺをぷにっとつつくと。


「そんなの一つだよ……好きだから……」


 その瞬間、頭が真っ白になった──。


「は、はい?」

「バカアホチンカス雄也!!」


 やめろ、チンカスだけは言うな!!


 待て、俺のこと「好き」って……。


「ふん!! 勘違いしないでね!!」

「なんだよ?」

「べ、別にあんたのためとかじゃなくて、個人的に……わ、私は雄也が好きだから!!」


 このタイミングで告白かよ……いや、返事は求められてないから告白ではないな。


 え、でも、これって俺さ……石川さんの件といい……もしかして……モテ期きたのか!?

 いや、勘違いするな俺!!

 どうせあれだろ? 友達として好きなんだろ?


「友達として……」


 ほらな?

 一人どんどんといくのは童貞の悪い癖だからな。


『わ、私のバカあああああああ』


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