第12話 ダブルデート(?)編4
「じゃ、じゃあまずはあたしからね!!」
「ぐぬぬぬっ──し、仕方ないわね!! 四十五分だけだからね!!」
「わかってますよ。あなたこそ、裏切らないでくださいよ?」
「ふん!!」とそっぽを向いて神崎は一人腕を組んで去っていった──。
それと同時に一気にデート感が……。
『はぁはぁ……ついに二人……ここら辺だと……あたしのポロリができるところは……///』
でもなかったようだ。
安心しろ、そんなところねーから。
痴女にも程があんだろ、自分からポロリ求めるとか……パワーワードすぎるだろっ!!
しかし、今は石川さんが望むようにしてやろう。
「それで、石川さん? どこに……」
すると、石川さんは目を光らせて「あそこ!!」と指をさす。
俺はそちらの方を向くと──。
「え……」
カップルや家族が記念撮影をするコーナーだった。
行列とまではいかないが、少し人が並んでいる。
その大体がカップルなのだが……。
「いや、あそこ……?」
「うんうん!!」
まぁ、石川さんは変に俺にデレデレだしな。
ああいうのをしたいのだろう。
やれやれ、どんどんとリア充に染まっていく自分が怖え。
『あそこで写真を撮れば、あの子に見せびらかせる!! そうすれば、きっとあの子は嫉妬してあたしにやきもちを焼く!!』
そっちかよ。
俺じゃなくて神崎のこと考えてたのかよ。
「じゃあ、並ぶか」
○
列に並んでいる間に俺は石川さんに問う。
「なあ、石川さん?」
「何❤️? マイダーリン!!」
「いや……その手離してくれません?」
石川さんは俺の右腕をたわわな胸でサンドイッチしながら抱いている。
その、マシュマロを超えてお豆腐みたいなんですけど……。
もう、柔らか過ぎてそれすら感じない。
化け物だよ……。
と、そうじゃなかったな。
「あのさ? なんで石川さんは俺のこと好きなんだ?」
ちょうど二人の機会だ。
このすきに聞くとしよう。
『え、なに!? も、もしかして……小倉くんはあたしのことが完全に好きになってくれたの///』
いや、違うよ?
ただ、こんな俺みたいな男を好きでいていいのかってよ。
「俺なんかじゃ石川さんと釣り合わないよ……石川さんはほんとに可愛いし俺なんかより……さ?」
俺はこんなラブコメのベタ的な発言した恥ずかしさのあまり、頰を赤く染めて言った。
石川さんの方をチラリ見ると、石川さんの顔は赤く染まっていた。
『これってやっぱり……あたし、捨てるのね!! ついに……///』
しないから、絶対にしないから!!
「そ、それは……ですね……」
『どうしよう……なんて言ったら好感度上がるかな!! 小倉くんとできるかな!!』
いや、考えるなよ、好感度とかこの質問で上げる気ねーから。
てか、なんか、少しシリアスに突入しそうな雰囲気なのに心の声が聞こえるだけですげぇ、和らぐんだが。
本来なら、ここで『唾をごくりと飲む』だとか『汗が流れる』とかの少しシリアスシーンだろうな……。
「そ、そうですね……あれは入学式の日です……」
か、回想に入るのか!?
てか、石川さんと俺は入学式で会ったっけかな?
多分無いと思うんだけど……。
『あれ、入学式だっけ? 始業式だっけ? あれ? あれ? あ〜ん、わかんないよぉ』
おい、大切な日だろ普通。
忘れるなよ!!
『ま、いっか……』
おい!!
○
「やばい!! 遅刻!!」とあたしはダッシュで正門を通り、入学式の行われている講堂へと向かった──。
今日は大事な入学式なのに……電車を乗り間違えてしまった……。
「最悪だよぉ……」
あたしは遅刻で入学式に入る恥ずかしさのあまり、目からは一滴の涙が流れた──。
そして、上靴に替えようと靴箱に到着すると……。
「早くしないとですね……」
「早くしなければ……」と男の声が隣からした。
私たちはお互いに振り向くと──。
「「え!!」」
なんと、もう一人遅刻をした人がいたのだ……。
「えっーと……」
「小倉雄也です」
「小倉くんも遅刻……?」
「うん、そう。君も……」
「そうです!!」
少し、寝癖があり目つきが悪いけど……カッコいい!!
え、これって運命ってやつ///。
「二人揃って同時に遅刻かぁ〜」
「ほんとですね」とあたしはニコッと言う。
「まあ、それも悪くないですね。早く行きましょ!!」
その男……小倉くんはあたしの右手首を掴み、走り出した──。
小倉くん……名前は覚えました。
○
「て、感じです……」
え、あの時の……嘘だろ?
「あの時のメガネしてたパッとしなかったのが」
「はい!! 私……石川詩織です!!」
そ、そうだったのか……あの後、たしか『ラブコメのヒロイン来たぁああ!!』とか騒いでたっけな。
なんせ、こんなラブコメイベントで女子との出会いとか、期待しちゃうだろ……。
それがこれってわけか……。
「いや、驚きだわ」
「覚えていてくれて嬉しいです!!」
ほんとごめんよ。
言われてみればたしかに面影があるわ。
まさか……こんな形で再開するとはな。
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